研究実績の概要 |
R3年度までに、研究内容として予定していた筋委縮性側索硬化症(ALS)モデルマウス(AR2マウス)を用いて、3種類の分子標的薬RNAアプタマーを、マウスの脳室内から中枢神経系へ直接投与することにより、脊髄の運動ニューロンの減少の抑制、TDP-43病理の改善、さらには長期投与による運動機能低下を抑制する効果を確認した。結果はLife Science Allianceへ投稿し掲載されている。Akamatsu, M. et al. Testing of the therapeutic efficacy and safety of AMPA receptor RNA aptamer in an ALS mouse model. 2022 Jan. 12;5(4)*e202101193. doi:10.26508/lsa.202101193. RNAアプタマーは、核酸を元に作成され、塩基配列により、グルタミン酸受容体への選択性を増減させることができる。また、ALSではAMPA型受容体の1つのサブユニット(GluA2)のみが、ALSの患者で未編集であることで病態が生じることから、R4年度は、AMPA受容体のサブユニット特異的に働くアプタマーや、近年ALSや全頭側頭葉型認知症(FTD)などの神経変性疾患での影響が報告されている、カイニン酸レセプターに対する阻害効果のあるRNAアプタマーの探索および合成を行った。今後の予定としては、アプタマーの投与方法の検討として、エクソソームや脂質ナノパーティクルなどへ封入したアプタマーを用いた治療効果の検討や、経鼻による新規投与ルートなど、非侵襲で臨床応用が可能な投与方法を検討する予定である。また、これまではALSの治療をターゲットとしていたが、前頭側頭葉型認知症(FTD)やてんかんなど、他の神経疾患に対しても治療効果を検討したいと考えている。
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