研究課題/領域番号 |
17K09762
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
安部 貴人 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30365233)
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研究分担者 |
高橋 慎一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任教授 (20236285)
伊藤 義彰 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90265786)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / dimethyl fumarate / Keap1/Nrf2 |
研究実績の概要 |
我々は既にマウスの中大脳動脈虚血再灌流モデルにおいて、dimethyl fumarate(DMF)が脳梗塞巣を縮小させ、神経保護効果をもたらすことを報告した。DMFは古くから尋常性乾癬の治療に使われてきたが、作用機序としてはKeap1/Nrf2活性化を介した抗炎症、抗酸化作用と考えられている。脳虚血における神経保護効果においても同様の機序が想定されたが、C57BL/6マウスから培養した細胞(astroglia、microglia、neurons)におけるin vitroの実験ではDMF投与の代謝産物で脳に直接作用するといわれているMMFのKeap1/Nrf2活性化に対する効果は軽度であった。また、DMFの神経保護メカニズムをin vivoで解明するため、Nrf2-/-マウスにおいて、DMFを投与後中大脳動脈閉塞再灌流(MCA-O)し、生じる梗塞体積を検討したところ、野生型同様Nrf2-/-マウスにおいても梗塞体積が縮小し保護効果を認めた。今年度はさらに脳梗塞におけるDMFの作用機序を検証するために、in vivoでKeap1/Nrf2システムの下流遺伝子であるHO-1の発現を検討した。まずは正常マウスにDMFを投与することによりHO-1の発現が上昇するかを検証したが、経胃管及び腹腔内の単回投与では予想に反してDMFを投与してもHO-1の発現上昇は認められなかった。さらに、MCA-Oを行った上でDMFを定期的に投与しHO-1の発現が変動するか検証した。梗塞側(右大脳)、健常側(左大脳)共にVeh群とDMF群でHO-1の発現に有意な差を認めなかった。しかし、6時間、12時間、24時間いずれの場合でも梗塞側でHO-1は上昇しており、薬剤とは関係なく生体保護効果が働いているものと考えられた。DMFによる脳保護効果は証明されているものの、主要な作用機序と考えられているKeap1/Nrf2系の活性化を示唆する検査結果は乏しかった。
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