本研究は,腸内細菌叢の異常による酸化ストレスが虚血性脳損傷に与える影響を分子病態の面から明らかにし、ペプチド療法、プロバイオティクス、腸内細菌移植による防御メカニズム解明を目的とし、これら治療法の臨床応用を目指し立案した。平成29年度は急性脳虚血と慢性脳低灌流モデルを用いて、腸内細菌叢の変化に関して比較検討する。特に酸化ストレスに関連する酸化的障害分子との関連の評価をタンパク質レベルで検討することを計画した。以下に研究実績を報告する。 マウス中大脳動脈閉塞・再灌流モデルおよびマウス慢性脳低灌流モデルにおける酸化的DNA障害と脂質過酸化代謝産物の脳内分布と経時的蓄積変化の免疫組織化学的評価を実施した。その結果、急性期モデルでは梗塞巣周辺に酸化ストレスマーカーの蓄積を確認した。また、慢性期モデルでは大脳白質において酸化ストレスマーカーが経時的に蓄積することを確認した。 次の段階として脳虚血による腸内細菌叢の変化と酸化ストレスの関連を検討するための実験を開始した。慢性脳虚血モデルにおいて、虚血前、虚血後1日、7日、14日、28日に糞便を採取し、経時的に腸内細菌叢のRNAのサンプリングを実施した。さらに、酸化ストレスとの関連性について検討を行うために、マウス尿中および血中の8-OHdGを測定し,虚血前と虚血後の同様の時間経過で尿および血液のサンプリングを実施した。 現在は、慢性脳低灌流モデルの糞便中腸内細菌のリボソームRNA解析を定量的RT-PCRを用いて開始している。
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