研究課題
本研究は,腸内細菌叢の異常による酸化ストレスや炎症などの組織傷害性要因が虚血性脳損傷に与える影響を分子病態の面から明らかにし、ペプチド療法、プロバイオティクス、腸内細菌移植による防御メカニズム解明を目的とし、これら治療法の臨床応用を目指し立案した。2017年度から継続で2019年度においても慢性脳低灌流モデルを用いて、腸内細菌叢の変化および炎症との関連の実験を継続した。生活習慣病のモデルマウスでの脳虚血下における炎症反応に関連する分子の変化をタンパク質レベルで検討したので,以下に研究成果を報告する。生活習慣病の代表の糖尿病動物モデルとして高脂肪食(high fat diet: HFD)を12週間摂取させたマウスと、対照として低脂肪食(low fat diet: LFD)を同様に摂取させたマウスに両側総頚動脈狭窄による慢性脳低灌流モデルを作製した。HFD群とLFD群において、腸管のバリアー機能についての評価を行い、HFD群ではバリアー機能破綻が著明であることが明らかになった。前年度までに血中LPS(Lipopolysaccharide)値がHFD群ではLFD群に比較して有意に高くなることを確認し、。LPSの受容体であるTLR4(toll like receptor 4)とLPSの脳内での変化を検討した。HFD群ではLFD群に比較して脳内LPSとTLR4発現量が有意に多く、炎症性サイトカインのIL-1の産生が増加して炎症が惹起されることが確認できた。以上のことから、糖尿病の病態下では腸内細菌叢異常による腸管バリアー機能の破綻によってLPSが血中に流出し代謝性エンドトキシン血症となっている。そこに脳虚血による血液脳関門機能の破綻で血中のLPSが脳内のTLR4に作用して、免疫担当細胞を活性化し炎症性サイトカインが増加し炎症反応が進展することで脳損傷をきたしていることを証明した。
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