研究課題/領域番号 |
17K09764
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
上野 祐司 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00349002)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳血管障害 / 脳虚血 / 軸索再生 / Semaphorin3A / エクソソーム / microRNA / 初代培養神経細胞 / ラット中大脳動脈閉塞モデル |
研究実績の概要 |
9週雄性Wistarラットを用いてMCAOを作成し、MCAO3、7、14、28、56日目の脳切片を用いて、免疫組織染色にてSemaphorin3A(Sema3A)の発現を解析した。Peri-infarct areaにおいてSema3A/MAP2陽性の神経細胞はMCAO 7から14日にかけて上昇し、その後減少した。そこで、MCAO後7日目にOsmotic mini-pumpを用いてSema3A阻害薬であるSM-345431を0.1mg/ml、1mg/ml、3mg/mlと濃度別に14日間投与した。MCAO後7、14、21、28日目にmNSSとRotarodで神経学的所見と運動機能を評価した。mNSSは14日以降でvehicle群に比して1、3mg/ml のSM-345431投与群で有意に改善した。Rotarodでは28日後において3mg/mlのSM-345431投与群で有意に改善した。脳切片では脳梗塞巣のサイズはHematoxylin and eosin染色にてvehicle群とSM-345431投与群では変化無かった。免疫組織染色では、peri-infarct areaにおいてSema3A/MAP2細胞はSM-345431投与にて濃度依存性に減少し、軸索のマーカーであるpNFHの発現はSM-345431投与で増加した。初代培養神経細胞にて、 OGD後rcombinant Sema3A投与でpNFHは減少し、SM-345431投与では増加した。Microfluidic chamberを用いた軸索伸長の検討では、SM-345431投与は、OGD後非投与、OGD後recombinant Sema3A投与に比して軸索伸展がみられた。蛍光免疫染色において、OGD後に伸展した軸索に発現するpGSK3βや、pGSK3/pNFHの共発現はSM-345431投与において増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究課題はラットMCAOモデルにおいてSema3A阻害薬の効果の検証を行うことであった。順調にSema3A阻害薬投薬の実験モデルを確立することができ、そして、ラットの神経徴候と運動機能においてSema3A阻害薬は有意に機能回復を促進することが確認できた。In vitroでは、microfluidic chamberを用いた検討にてSema3A阻害薬は虚血後の神経細胞の軸索伸展を促進させることを確認した。また、免疫細胞染色にて、虚血後に新生される軸索においてpGSK3βが発現していることを確認した。以上より、研究課題は概ね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
脳梗塞のperi-infarct areaには活性化したアストロサイトが集簇し、慢性期には軸索再生の障壁となるグリア瘢痕を形成するため、Sema3A阻害薬の活性化アストロサイトへの作用を検証する。またアストロサイトから放出されるエクソソームにも着目し、軸索再生への作用機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に当該抗体、エクソソーム抽出キット、アストロサイト培養に伴う培養試薬、実験動物の購入が必要であるため。
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