研究課題/領域番号 |
17K09765
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
柴 佳保里 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30468582)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Parkin / PINK1 / mitophagy |
研究実績の概要 |
本研究課題では、若年性パーキンソン病(PD)原因遺伝子PINK1とParkinが制御するマイトファジーシグナル伝達に関与する新規分子Phospho-ubiquitin-binding protein 1 (PUBP1)の機能解析を行っている。 まず、PUBP1ノックアウト培養細胞を用いてPINK1-Parkinマイトファジーを正に制御していることを見出した。具体的には、ミトコンドリア外膜タンパク群(TOM20、Mfn1など)の発現量を指標として、野生型と比較し、PUBP1ノックアウト細胞ではPINK1-Parkinマイトファジーが遅延する結果を得た。また、オートファゴソーム形成の場となる小胞体部位のマーカータンパク質DFCP1の出現頻度を確認した結果、野生型と比較して、PUBP1ノックアウト細胞においてオメガソーム様の紐状のDFCP1シグナルが多く見られた。次に、PUBP1がFYVEドメインを持つことから、オートファゴソーム膜形成に関与する可能性があるため、PUBP1ノックアウト細胞におけるオートファゴソームの形態を観察したところ、野生型と同様であることを確認した。すなわち、PUBP1はオートファゴソーム膜形成に関与しない。 先行論文において、PUBP1は飢餓状態によるオートファジー誘導の際、リン酸化修飾されることが報告されている。そこで、PINK1-Parkinマイトファジーに関与するキナーゼを過剰発現させた結果、通常状態においてもPUBP1のリン酸化修飾が観察されることを見出した。 以上の結果から、PUBP1はPINK1-Parkinリン酸化シグナル伝達に関与し、オートファゴソーム膜形成過程の上流で機能する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、申請時の予定通り、計画を進められている。 PUBP1がPINK1-Parkinシグナル伝達に分子レベルで関与することを示し、生体レベルで検証する準備もできている。 また、PINK1-ParkinマイトファジーがPINK1、及びParkinに連鎖するパーキンソン病発症に関与することをiPS由来ドパミン神経細胞で示し、国際論文としてまとめることができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、PINK1-Parkinシグナル伝達におけるPUBP1の生理的意義を検討する予定である。 生体内においてPUBP1がPINK1-Parkinマイトファジーに関与するかどうかを検討するために、PUBP1ノックダウン(RNAi)及び、過剰発現したショウジョウバエを入手している。これらのハエを用いてPINK1、Parkinと遺伝学的相互作用があるかどうかを検討する。また、PUBP1ノックダウン(RNAi)とオートファジーを生体内で観察できるGFP-RFP-ATG8が同時に発現するショウジョウバエを樹立しているので、オートファジーやマイトファジーにおけるPUBP1の生理学的意義を明らかにする予定である。 また、培養細胞内において、PINK1-Parkinに関与するキナーゼを発現させるとPUBP1のリン酸化修飾されることを見出している。今後、このリン酸化修飾部位を同定し、PUBP1のリン酸化修飾がPINK1-Parkinマイトファジーに関与するかどうかを確認する。必要であれば、ショウジョウバエを用いてその生理学的意義を検討する。
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