健康寿命を短縮する加齢性筋萎縮(サルコペニア)に対する治療法の開発は、超高齢化社会を迎えたわが国の課題である。われわれは、老化モデルマウス骨格筋において、筋量を減少させるマイオスタチン/TGF-β の活性が亢進していることを明らかとした。本研究は、交配によってマイオスタチン活性を阻害した老化モデルマウスを作出し、骨格筋の網羅的遺伝子発現解析からマイオスタチン/TGF-βを起点とするサルコペニアの分子機構の解明を目指した。まず、老化モデルマウスに、マイオスタチン活性阻害マウスを交配し、F2世代で、野生型、マイオスタチン活性阻害、老化モデル、マイオスタチン活性阻害老化モデルマウスの4種類の遺伝子型を示すマウスを作出した。マイオスタチン活性阻害老化モデルマウスの骨格筋組織・寿命について、それぞれ老化モデルマウスと比較解析した。(i)マイオスタチン阻害老化モデルマウスでは、老化モデルマウスで認められる体重減少・握力減少が改善した。(ii)前脛骨筋及び横隔膜筋の解析では老化モデルマウスの筋張力減少がマイオスタチン阻害で改善が認められた。(iii)摘出骨格筋の重量・組織・免疫組織解析では筋線維萎縮と筋衛星細胞減少がマイオスタチン阻害によって改善が認められた。(iv)Kaplan-Meier曲線で老化モデルマウスの寿命短縮を改善した。阻害医薬リコンビナント蛋白質の大量精製に取り組み、老齢野生型マウスへの投与を実施している。サルコペニアへの治療介入の突破口を開くことを最終目標とする。
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