研究課題
進行性多巣性白質脳症(Progressive Multifocal Leukoencephalopathy: PML)は主にT細胞系の免疫能の低下を背景として生じる重篤な脱髄疾患であり、JCウイルス(JCV)が脳の白質で増殖することで引き起こされる。PMLに対する根本的治療法は確立されていないが、早期の診断、免疫抑制の解除および治療薬候補の投与による進行の停止や改善が報告されている。また、白質病変を呈する他のウイルス感染症が存在することから、PML疑い患者の診断においてはJCVを含む広範囲な病原体を標的とした鋭敏な検査が有用である。本研究は「過去10年以上にわたって集積されたPML疑い患者の脳脊髄液検体および臨床情報を後方視的に解析し、神経感染症の早期診断において有用な超高感度PCR検査系を実用化する」ことを目的とする。前年度までの研究では、限外濾過デバイスならびに高度濃縮カラムを用いて、脳脊髄液中の極微量のJCVを確実に検出するための超高感度PCR検査系を実用化した。また、検出されたJCVが健常人に持続感染しているアーキタイプなのか、もしくはPMLを生じるプロトタイプ(変異型)なのかを判別するためのマルチプレックスPCR検査系を開発した。加えて、PML疑い患者の脳脊髄液DNAを次世代シーケンサー等により解析したところ、それらの一部にヘルペスウイルスが検出される症例が認められたことから、複数のヘルペスウイルスを検知するためのリアルタイムPCRを確立した。本年度における研究では、PML疑い患者の脳脊髄液中に出現することがある水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン-バーウイルスならびにサイトメガロウイルスのゲノムDNAを同時に検出するためのマルチプレックスPCR検査系を至適化し、臨床検体を用いたバリデーションによってその実用性を明らかにした。
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