研究課題/領域番号 |
17K09769
|
研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
天羽 拓 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 講師 (40453922)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | パーキンソン病 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
パーキンソン病の発症機序は十分に解明されておらず、第1の要因である加齢に加え遺伝的素因や環境有害物質などが関与する多因子疾患と考えられているが、ミトコンドリア機能障害を示唆する知見が多く蓄積されている。本研究ではパーキンソン病病態とミトコンドリア機能障害との関連を明らかにするために、ヒトや実験動物でパーキンソン病様症状を引き起こす薬剤MPTPの細胞内代謝産物で、ミトコンドリア呼吸鎖複合体Iの阻害剤とされるMPP+を添加したSH-SY5Y細胞(ヒト神経芽細胞腫)のメタボローム解析を行った。 さらに本研究では、コードするタンパク質がミトコンドリア膜間腔に局在する遺伝性パーキンソン病の新規原因遺伝子coiled-coil-helix coiled-coil-helix domain containing 2 (CHCHD2) に着目した。パーキンソン病におけるCHCHD2遺伝子変異の病態生理を明らかにし、パーキンソン病の病態を反映した新規モデル細胞を確立するため、CRISPR/Cas9システムをもちいてSH-SY5Y細胞のCHCHD2遺伝子破壊を試みた。その結果、複数のノックアウトクローンを得ることができた。CHCHD2タンパクがミトコンドリア膜間腔に局在していたことから、ミトコンドリア機能を中心に種々の解析を行い、作製したノックアウト細胞の評価を行った。 また患者の剖検脳の解析からT61I変異CHCHD2にはα-シヌクレインの凝集促進効果があると考えられた。本事象を検証するために、組み換えα-シヌクレインの調製を試みた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタボローム解析の結果、MPP+添加によりミトコンドリアのクエン酸回路、酸化的リン酸化から乳酸発酵へ代謝がシフトしていることが認められた。 筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子であるCHCHD10は、CHCHD2遺伝子のパラログであり、細胞内では両タンパクがミトコンドリア内で複合体を形成していると報告された。そこでBlue Native-PAGEによりCHCHD10の複合体形成を調べたところ、CHCHD2ノックアウト細胞では、いずれのクローンも複合体が消失していた。したがって作製したSH-SY5Y CHCHD2ノックアウト細胞は、CHCHD2のミトコンドリアにおける機能を理解し、パーキンソン病におけるCHCHD2遺伝子変異の病態生理を明らかにするのに、有用なモデルになると考えられた。 一方、α-シヌクレインはAddgeneより入手したpET21a-alpha-synucleinを用いて大腸菌BL21(DE3)により発現及び精製することができた。また、精製したα-シヌクレインを37℃において72時間撹拌することでアミロイド凝集体を得た
|
今後の研究の推進方策 |
メタボローム解析の結果は論文にまとめて発表する。 作製したCHCHD2ノックアウト細胞を用いて今後もさらに研究を進める。CHCHD2欠損による影響を評価するとともに、プラスミドによりパーキンソン病患者由来のT61IおよびR145Q変異型CHCHD2を強発現させ、遺伝子変異の影響を解析する。またこれらの細胞にα-シヌクレイン アミロイド凝集体シードを導入し、凝集促進効果を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
都合で参加予定だった学会に行けなかったのと昨年度からの残金があったため。次年度発表予定の論文をオープンアクセスにするための費用に当てる。
|