研究課題/領域番号 |
17K09770
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
矢澤 生 常葉大学, 保健医療学部, 教授 (20312217)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / シヌクレイン / 多系統萎縮症 / 分子シグナル |
研究実績の概要 |
多系統萎縮症(multiple system atrophy;MSA)は難治性の神経変性疾患で神経変性に対して抗パーキンソン病剤の効果はない。MSAでは中枢神経のグリア細胞であるオリゴデンドロサイト(グリア細胞質封入体;GCI)と周辺の神経細胞の2種類の細胞にalpha-synucleinが蓄積し、神経細胞が脱落して多彩な臨床症状をきたす。我々はオリゴデンドロサイト特異的にヒトalpha-synucleinを発現させた遺伝子改変マウスをMSAモデルマウスとして開発した。マウス中枢神経系の変性オリゴデンドロサイトに起こるalpha-synuclein蓄積が神経細胞の内因性alpha-synuclein蓄積を誘導し、神経細胞の脱落をきたすことを明らかになった。さらに、MSAモデルマウス脳由来の初代培養細胞を使って、オリゴデンドロサイトから分泌されるcystatin Cが神経細胞において内因性のマウスalpha-synucleinの蓄積を引き起こすことを見出した。本研究ではMSAモデルマウスを用いてオリゴデンドロサイトから分泌されるシグナル分子であるcystatin Cによる神経変性の機序を明らかにし、alpha-synucleinを阻害する方法を検討した。MSAモデルマウス脳の混合初代培養細胞では、第一にオリゴデンドロサイトにヒトalpha-synucleinが蓄積することによりcystatin Cが分泌される。第二に神経細胞に内因性のマウスalpha-synucleinが軸索を中心にして蓄積して、アポトーシスなどの神経変性の過程を観察した。さらに治療法開発を具体化するために、昨年度よりモデルマウス個体の解析を行い、明らかな低下が認められた運動機能などの表現型の回復について検討を進めている。今後は回復が確認されたマウス個体における中枢神経系の組織学的、生化学的な検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究場所の変更と新型コロナウイルス感染症による遺伝子改変マウスの搬入や研究実施期間が大きな影響を受けている。本来実施を予定していた動物や細胞に関する実験に際して、新型コロナ感染症による時間的、空間的な制限により実施機関の施設や研究協力者の支援が得られ難くなり、マウス個体に関する研究は大きく遅延した。さらに、マウスの繁殖にも影響が及んであり、受精卵から遺伝子改変マウスの作製をし直すこととなり遅延が大きくなった。
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今後の研究の推進方策 |
マウス個体の観察にはマウスの繁殖による個体数の確保は欠かせないことから、現在は遺伝子改変マウスの繁殖に取り組んでいる。繁殖では、出産したばかりのマウス母親が「ネグレクト」によって、子育てをしない現象が観察されて、出産した子マウスが個体の観察実験を実施できなかった。そこで、新たなマウス個体の作製を過去に保存してた受精卵から再度作製を行い、新たに9匹の遺伝子改変マウス個体を得ることができた。今後は、これらを使って。再度、繁殖および個体実験を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス個体に関する研究が遅延して、本来使用する予定であったマウス飼育に関する費用や遺伝子解析実験用の消耗品の購入ができなかったため
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