研究課題/領域番号 |
17K09773
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
割田 仁 東北大学, 大学病院, 助教 (30400245)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経再生 / 運動ニューロン / アストロサイト / 神経炎症 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)は代表的な成人発症の運動ニューロン疾患であり、脊髄および脳・脳幹の運動ニューロン変性により発症から数年で全身の筋萎縮・筋力低下が進行し、呼吸筋麻痺をきたす致死性の神経変性疾患である。 本研究では、ALSにおける選択的運動ニューロン変性を再現する代表的モデル、家族性ALS関連変異Cu/Zn superoxide dismutase遺伝子(SOD1)導入ラット(以下、ALSラット)を用いた生体内神経再生誘導を計画した。ヒトALS剖検組織でも確認されているように、進行性の神経変性を示すALSラット脊髄前角においても、進行性のグリア細胞活性化が認められる。しかし、慢性進行性かつ過度のグリア細胞活性化は発症後の神経変性促進因子のひとつでもあることが複数の報告から示唆されており、細胞外微小環境における神経炎症の持続は非細胞自律的な機序で運動ニューロン変性を促進することが実験的に知られている。 前年度までに、成体中枢神経径の細胞外微小環境においてアストロサイトの分化増殖を促進する主要な分泌性糖蛋白、骨形成蛋白質(bone morphogenetic protein, BMP)の中でも、BMP4がALSラット脊髄活性化アストロサイトで進行とともに発現亢進していることを明らかにした。 上記成果をもとに今年度は、BMP4の内在性拮抗因子であるnoggin、あるいはラット内在性BMP4発現を抑制するアンチセンス・オリゴヌクレオチドを発症後の脊髄腔内に投与する介入研究を実施した。発症後の介入であっても、ALSラット脊髄でBMPシグナリングを抑制することで、新生アストロサイトの増加、活性化アストロサイトの増生、ミクログリア活性化といった神経炎症全体を抑制できた。その結果、運動機能低下を抑制し、生存期間の延長を有意にもたらすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に則って本研究を実施し、昨年度の成果をふまえた介入研究を実施できた。その結果、ALSモデルラット成体脊髄アストロサイトの分化増殖促進因子が神経炎症をコントロールする上での標的となり得ることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
介入研究による成果をふまえ、その分子作用メカニズムを解明する。また、ALSモデルラット成体脊髄内における分化誘導をより効果的におこなうための介入方法の改変を推進する。さらに、新たな標的分子を網羅的に探索する将来的な研究計画へと応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)既存試薬で研究実施可能であったため。 (使用計画)次年度物品費(試薬購入)に使用し、本研究を継続実施する。
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