研究実績の概要 |
HTRA1遺伝子変異による HTRA1プロテアーゼ活性の低下は脳小血管病を引き起こす。報告者は、劣性遺伝形式で発症する稀な病態と考えられていたHTRA1関連脳小血管病が、優性阻害効果によって優性遺伝形式でも発症することを明らかにした。しかし、本症の罹患者数は不明である。 本研究課題では、遺伝子多型データベースに登録されたHTRA1遺伝子多型の優性阻害効果に焦点を当て、病的な多型を選別し、そのアレル頻度からHTRA1関連脳小血管病の罹患者数を推計することを目的とした。昨年度までに、次の方法によって、HTRA1プロテアーゼ活性が低下する多型を選別した。約120,000アレル分のデータを統合したExAC Browserを用いて、アミノ酸置換を伴うHTRA1遺伝子の一塩基多型118種から、①アレル頻度が1/100,000以上、②PolyPhen-2によるスコアが0.5以上(最小0、最大1.0)、③アミノ酸の置換部位がプロテアーゼドメインに位置するという3つの条件を全て満たす多型10種を選択し、それぞれの精製蛋白を作成した後、FITCでラベルしたβカゼインを基質として酵素活性を測定したところ、いずれの多型も野生型に比して HTRA1プロテアーゼ活性が有意に低下することを確認した。 本年度は、この10種の多型について、優性阻害効果の有無を検討した。優性阻害効果については、多型HTRA1と野生型HTRA1を混合した精製蛋白を作成し、FITCでラベルしたβカゼインを基質として酵素活性を測定することによって評価した。その結果、優性阻害効果を示す多型は見いだせなかった。以上の結果から、HTRA1関連脳小血管病は稀な疾患であると結論した。
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