研究実績の概要 |
視神経脊髄炎 (neuromyelitis optica; NMO) は「アクアポリン4 (AQP4) 抗体による自己免疫」と, その結果起こる「グリア・神経変性」を特徴とする中枢神経系自己免疫疾患である. 本研究ではNMOと, その類縁疾患である多発性硬化症 (multiple sclerosis; MS) をはじめとした中枢神経系自己免疫疾患の自然免疫システムに着目し, (1) 炎症性インフラマソームの活性化による免疫寛容の破綻・自己免疫応答の増幅, (2) グリア・神経変性を制御し, 脳組織の恒常性破綻もしくは維持を担う自然免疫細胞を同定し, その特徴を明らかにすることを目的とする. 初年度 (平成29年度) は, NMOやMSをはじめとした中枢神経系自己免疫疾患を持つ症例の標的臓器 (脳, 脊髄など), 血液, 髄液を対象に, 自然免疫システムを構成する細胞群, 特に組織在住リンパ球の浸潤動態を, 免疫組織学的手法を用い解析し, 中枢神経系内の特異な分布を明らかにした. 二年度 (平成30年度) はNMOの病変局所には炎症性・調節性サイトカインを産生するリンパ球, 活性化マクロファージ, 活性化血管が存在することを免疫組織化学法を用いて明らかにした. 三年度 (令和元年度) はこれまでの結果を免疫組織化学法に加え, qRT-PCR法とin situ hybridization法を用いて確認した. 以上から, NMOの標的臓器である中枢神経には, 発症の惹起となる免疫寛容の破綻と自己免疫応答の増幅, その結果として起こる脳変性に影響を与える自然免疫システムに属する細胞群の一部を明らかにした.
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