研究課題
神経免疫疾患の分野において近年自己抗体の必要性は診断マーカーとしての意義のみならず、病態の解明やモデル動物の作製に重要と考えられている。我々はヘルパーT細胞やマクロファージを介した脊髄の炎症機転について実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)などの動物モデルを用いて検討してきたが、視神経脊髄炎(NMO)における抗アクアポリン(AQP)4抗体の病原性を世界に先駆けて報告し、NMOが抗AQP4抗体によるアストロサイトパチーであることを明らかにした。さらに急性期NMO患者の免疫吸着後カラムから精製したIgGをパッシブトランスファーすることにより世界で初めてNMO動物モデルを作成した。このように自己抗体の発見は神経疾患の概念や治療法の革新をもたらしてきた。その一方で、脊髄炎の中には明らかに血液浄化療法や大量ガンマグロブリン療法が有効で液性免疫の関与が示唆されるにもかかわらず、自己抗体が同定されていないものが未だ多数存在する。本研究では神経免疫疾患、特に脊髄炎に焦点を当て、自己抗体を同定し、バイオマーカーとしての確立を目指すとともに、シングルセルテクノロジーを駆使することにより病原性リコンビナントモノクローナル抗体を作製し、動物モデル作成や創薬につなげることを目的としている。脊髄炎を来す代表的疾患であるNMOSD患者の髄液プラズマブラストからリコンビナントAQP4抗体を作成した。この抗AQP4 Abにアストロサイトを刺激するとミトコンドリアDNAとケモカインであるCCL2が増加した。ミトコンドリアDNAは単球からのCCL2を増加させることから、単球の病巣へのリクルートが増強されることが予測される。またアクアポリン4抗体を直接ラットの脊髄に注入したところ疼痛が誘発され、NMO疼痛動物モデルの確立に成功した。NMOの疼痛は非常に強く、就業や家庭生活の妨げとなり、大きな社会的損失を来しているが、その治療法に結び付くと考えられる。
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J Neuroinflammation
巻: 16 ページ: 162
10.1186/s12974-019-1551-z.