研究課題/領域番号 |
17K09786
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
池川 雅哉 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60381943)
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研究分担者 |
近藤 誉之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (50322756)
角田 伸人 同志社大学, 付置研究所, 研究員 (50544615)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イメージング質量分析 / 多発性硬化症 / EAE / バイオマーカー / 治療薬 |
研究実績の概要 |
神経難病の多発性硬化症 (Multiple Sclerosis; MS) および その類縁疾患の視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica; NMO) は、中枢神経系の炎症性自己免疫疾患で、鑑別が難しく治療方針に苦慮するのが現状である。超早期のMS病態を反映する分子を特定するため、新しい質量分析法であるImaging Mass Spectrometry(IMS)法を用いて実験的自己免疫性脳脊髄炎モデル(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis: EAE) を解析してきた。その結果、症状のあらわれる以前からEAEマウス神経組織において発現の認められるタンパク質を特定した。この分子群は、健常マウス脳においては認められないことから EAE病巣の進行と深く関わっており、多発性硬化症のバイオマーカー候補と考えられる。これらの分子群の中から、先行研究によるデータから候補タンパク質を見いだし、さらに抗体を用いて免疫組織学的解析をおこなったところ、脳脊髄組織内に異所性に認められた免疫細胞群と一致して症状の発症する前から慢性期にかけて局在することが判明した。 このタンパク質の特異的阻害剤を用いた治療戦略を考案した。本タンパク質の特異的阻害剤を2日に1回、EAEマウスに経口投与することによって明らかな予防効果が得られた。また、EAEマウスの症状がでてから特異的阻害剤を2日に1回、経口投与を始めることにより明らかな治療効果を得た。両者において、健常マウスへの投与例も含め 明らかな副作用症状は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で目的とする超早期のEAEマウス神経組織において発現の認められるタンパク質をイメージング質量分析法を用いて特定した。この分子群は、多発性硬化症のバイオマーカー候補と考えられ、免疫組織学的解析似ても確証が得られた。さらに診断バイオマーカーとしての役割だけでなく、このタンパク質の特異的阻害剤を用いた治療戦略により明らかな治療効果を得た。このことは、両者において、健常マウスへの投与例も含め 明らかな副作用症状は認めなかった。この発見は、これまでの多発性硬化症治療に一石を投じる結果となり、新たな治療標的をイメージング質量分析を発端に発見したことになる。
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今後の研究の推進方策 |
今回発見したバイオマーカーがヒト疾患においても同様に機能するかどうか検証するためヒト臨床研究へと発展させる。また、動物実験においては、さらにイメージング質量分析法や免疫組織化学の方法を組み合わせて、治療標的分子の体内での発現の機序などを解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定見込みより大幅に研究成果の進展が得られたため、動物作製や薬剤投与、並びに病理標本作製、質量分析、論文作成等への出費が生じたため。
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