研究課題
Lambert-Eaton筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome:LEMS)は傍腫瘍性症候群として報告されたが、約90%はP/Q型電位依存性カルシウムチャネル(voltage-gated calcium channel:VGCC)抗体に因る自己免疫性・神経筋接合部疾患でもある。LEMS患者の約10%に小脳失調が出現し、傍腫瘍性小脳変性症(paraneoplastice cerebellar degeneration: PCD)を合併する(PCD-LEMS)。その小脳失調の発症機序は、「神経筋接合部で筋力低下を引き起こしているP/Q型VGCC抗体が血液脳関門(blood brain barrier:BBB)を通過して、小脳の分子層に高密度に分布するP/Q型VGCCに作用し、down-regulationという機序で小脳失調を呈する。」という仮説が提唱されている(Fukuda et al.Ann Neurol, 2003)。本研究では、ヒトBBB構成内皮細胞にLEMS-PCD患者とLEMS患者の免疫グロブリンG(immunoglobulin G:IgG)を作用させ、細胞生物学的見地からこの仮説を検証した。方法として、BBB機能の指標となるclaudin-5、 occludin蛋白量と電気抵抗値を測定した。その結果、LEMS-PCD患者IgGはBBB機能を破綻させたが、LEMS単独患者IgGでは変化が無かった。以上より、我々の仮説を支持する結果が得られた。本研究の目標は、LEMS-PCD患者IgGのなかからBBB機能に障害を与えている自己抗体を見つけることであるが、その1つの候補として、glucose-regulated protein 78 (GRP78)抗体を同定し、報告した。(Shimizu et al, Brain, 2019)
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医学と薬学
巻: 77 ページ: 1057-1063