研究課題
大脳皮質基底核症候群や進行性核上性麻痺、アルツハイマー病などのタウオパチーでは、細胞内のタウ蛋白異常蓄積とそれに引き続き起きるモノアミン酸化酵素B増加を伴ったグリオーシスが病理学的に特徴である。本研究では生体脳内のタウ蛋白凝集体とモノアミン酸化酵素B両方に結合できる[18F]THK5351を用いて、大脳皮質基底核症候群以外のタウオパチー(進行性核上性麻痺など)でもPETによる可視化・画像化が可能であることを確認するとともに、[18F]THK5351 PETが大脳皮質基底核症候群や進行性核上性麻痺、アルツハイマー病との鑑別に有用であることを検討する。本研究は平成29年度から令和3年度までの5年計画を予定しており、今までに12名の大脳皮質基底核症候群患者、14名の進行性核上性麻痺患者(リチャードソン症候群)において、神経心理検査、運動機能検査、脳MRI検査及び[18F]THK5351 PET検査を行うことができた。10名のアルツハイマー病患者を加え、受信者動作特性曲線下面積を解析したところ、大脳皮質基底核症候群と進行性核上性麻痺の鑑別に中心前回、補足運動野、中心後回、大脳皮質基底核症候群とアルツハイマー病の鑑別に中心前回、下側頭回、紡錘状回、進行性核上性麻痺とアルツハイマー病の鑑別に下側頭回、紡錘状回が有用であった。大脳皮質基底核症候群の認知機能や運動機能スコアと[18F]THK5351集積に相関を認めた。[11C]PIB PETを施行し陽性であった大脳皮質基底核症候群と進行性核上性麻痺患者を除外し、[18F]THK5351 PETによる疾患鑑別について再検討中である。今後は大脳皮質基底核症候群を含めたタウオパチーとパーキンソン病(シヌクレイノパチー)の鑑別についても、[18F]THK5351 PETの有用性を検討する予定である。
4: 遅れている
研究対象である大脳皮質基底核症候群や進行性核上性麻痺患者のピックアップならびに同意取得、神経心理検査、運動機能検査、脳MRI検査、[11C]PIB PET検査、[18F]THK5351 PET検査まで順調に遂行でき、大脳皮質基底核症候群の経時的変化についても比較・解析ができ学術雑誌に報告した。[18F]THK5351 PETによるタウオパチー間での疾患鑑別についての解析や論文化は遅れている。
今後、[11C]PIB陰性すなわちアミロイドβ蓄積がない大脳皮質基底核症候群、進行性核上性麻痺において様々な画像解析ソフトを用いて、[18F]THK5351 PET検査がアルツハイマー病を含めたタウオパチー間で鑑別に有用であるかについて再検討する。また、パーキンソニズムをきたす大脳皮質基底核症候群、進行性核上性麻痺(タウオパチー)とパーキンソン病(シヌクレイノパチー)の鑑別についても、[18F]THK5351 PETの有用性について検討する。
各疾患のPETデータ解析や病理学的検討が不十分であったため残額が生じてしまった。引き続き種々の画像解析ソフトを用いた臨床症状とPETデータ解析並びに病理学的検討、学会発表、論文投稿などを次年度に行うこととし、未使用額をその費用に充てることとしたい。
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