研究課題/領域番号 |
17K09791
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
桑原 聡 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70282481)
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研究分担者 |
三澤 園子 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (30375753)
平野 成樹 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (60375756)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経障害性疼痛 / 痛覚誘発脳電位 / 脳機能画像 / 脳血流 |
研究実績の概要 |
研究実績の概要は以下の様に進んでいる。 1.痛覚線維選択的電気刺激による脳誘発電位:小径有髄線維刺激による大誘発脳電位については、平成28年度までに正常対照20名、神経障害性疼痛患者15名による記録を行い、疼痛患者における脳電位変化の傾向を把握した。平成29年度には、この小径有髄線維刺激脳電位の症例を正常者30名、神経障害性疼痛患者30名まで増やして所見を確認するとともに、無髄線維選択刺激脳電位における正常対照、疼痛患者による計測を開始している。小径有髄線維および無髄線維刺激による誘発電位を同一患者において行うことによって、小径有髄線維と無髄繊維の刺激による誘発電位の潜時、振幅、および振幅比をそれぞれの症例において両電位の相関関係の解析を開始した。その結果、神経障害性疼痛が小径有髄線維から無髄線維への脱抑制と関連する所見を得ている。この結果の一部を国際医学誌に公表した。 2.脳機能画像・安静時機能的MRIによる疼痛の客観的評価:慢性疼痛患者15名における脳血流SPECT、安静時機能的MRIにおける計測を行った。脳血流SPECTに関しては、すでにデータベース化されている正常対照のデータと統計的比較解析を行うことにより、神経障害性疼痛患者において帯状回前部、側坐核などの大脳辺縁系を中心とする特定の脳部位が賦活されているという予備的結果を得ている。これらの成果を国際医学誌公表に向けて論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.痛覚線維選択的電気刺激による脳誘発電位:小径有髄線維刺激、無髄線維刺激に誘発電位を同一症例において記録し、目標とする症例数に近づきつつあるとともに小径有髄線維と無髄繊維のそれぞれにおける相関関係の解析を開始し、疼痛が小径有髄線維から無髄線維への脱抑制と関連するという作業仮説を実証する結果を得ている。この一部を国際医学誌に公表した。 2.脳機能画像による疼痛の客観的評価:慢性疼痛患者30名を目標として研究を進め、現在15名における脳血流SPECTの検討を終了した。正常対照のデータと比較することにより、疼痛患者において大脳辺縁系における特定の脳部位が賦活されているという予備的結果を得て、論文公表を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策: これまでに得た痛覚刺激脳電位による無髄有髄の脱抑制と疼痛の程度の相関を検討すること、脳血流SPECTを用いた大脳辺縁系能血流増加(賦活)と疼痛の程度を検討することにより、同一患者における疼痛の多面的・他覚的評価法を確立できるものと思われる。さらに神経障害性疼痛治療薬剤によるこれらの変化を解析することにより、慢性疼痛の病態解明と至適治療法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の物品を使用したため、58,958円を翌年度へ物品費として繰り越しすることとした。
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