研究実績の概要 |
1.痛覚線維選択的電気刺激による脳誘発電位: 小径有髄線維・無髄線維刺激による大脳誘発電位は、平成31年度までに前年度分を加えて正常対照30名神経障害性疼痛患者58名において記録を行い、疼痛患者において小径有髄線維・無髄線維刺激それぞれに対する脳電位について解析を行った。同一被験者において小径有髄線維および無髄線維刺激による誘発電位の潜時、振幅、及び振幅比をそれぞれ評価することによって、各パラメータの相関関係を解析した。その結果、神経障害性疼痛患者にいて小径有髄線維刺激の脳電位の振幅が低下するものの、無髄線維刺激の電位振幅は相対的に増大していることが示された。これらの結果は、神経障害性疼痛が小径有髄線維から無髄線維への抑制が低下することによって生じているという作業仮説を支持するものであった。
2.脳機能画像による疼痛の客観的評価: 平成31年度までに神経障害性疼痛患者58名において脳血流SPECTを用いて脳内の活性化部位を評価し、すでにデータベース化されている正常対照のデータと統計的比較解析を行うことにより、慢性疼痛患者において大脳辺縁系の中でも帯状回前部において血流が増加しており、患者の自覚的疼痛評価スケールと血流増加の程度が相関することを見出した。また、ノルアドレナリン・セロトニン取り込み阻害薬による治療後に、この血流変化が正常化の方向に向かうことを示した。2018年に公表した慢性疼痛を呈する代表的疾患である糖尿病性ニューロパチーにおける結果(Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry)その他の疾患について解析中である。
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