パーキンソン病では前頭側頭葉連合野の相対的血流低下とドパミントランスポーター画像において線条体後背部から低下し、徐々に前方の尾状核へと低下が広がっていくことが知られています。 進行期パーキンソン病では認知機能低下が出現しやすく20~30%に合併するといわれている。認知機能低下がないパーキンソン病では、脳深部刺激療法が運動症状改善を目的として行われるが、その一部に術後に認知機能低下を認めることがある。我々は両側視床下核脳深部刺激療法を行い、術前および術後3~6ヶ月後に描画機能と脳血流画像を測定し、手術による変化を調査した。21例中11例(52.4%)において何らかの描画機能低下を認めた。術後に描画機能低下を認めたパーキンソン病は、術前の描画機能は問題がなく、術後にfrontal assessment batteryの低下と帯状回の血流低下を認めた。つまり、両側視床下核脳深部刺激によって認める描画機能の低下は、前頭葉、とくに帯状回の機能と関連し、視床下核の辺縁系回路の異常を捉えている可能性が考えられた。 また、我々は30名の健常者を対象としてドパミントランスポーター画像と知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale III版: WAIS-III)を調査し、線条体ドパミン機能と認知機能の生理学的な関係性について調査した。線条体ドパミントランスポーター結合率は言語性IQと相関し、加齢の影響を受けなかった。また、線条体の中でも後方の被殻とは認知機能で関連する項目がないのに対して、右尾状核では絵画完成課題と、左尾状核では類似課題と相関を示し、加齢とは独立していた。つまり、尾状核は認知機能、特に言語機能と関連があることが示された。パーキンソン病では語流暢性が低下することがしられており、この病態を説明するものと考えられる。
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