研究課題
2019年度はアルツハイマー病(AD)の進行予測に関してより多面的に解析を行なった。本邦のJ-ADNIと北米のNA-ADNIの早期AD、即ち後期軽度認知機能障害(late MCI)と軽度AD(mild AD)を対象とし、進行群/非進行群間で進行に寄与する因子をウェルチのt検定と線形回帰モデルで解析した結果、脳脊髄液中総タウ及びリン酸化タウ, ミニメンタル試験(MMSE)得点、FAQ得点、アルツハイマー病評価尺度(ADAS-cog)13総点が悪化に寄与した。またADAS-cogの下位検査では語想起、構成、遅延再生、語理解の低得点が優位な予後悪化因子であった。MRIデータを用いた進行予測では、重み付き遺伝子共発現ネットワーク解析(WGCNA)の手法でJ-ADNIのMRIデータを解析した結果、側頭葉領域の萎縮の程度からADの進行が予測可能であった。またMCIからADへの進行に関連する共萎縮モジュールは、36か月間に側頭葉から頭頂皮質領域に拡大し、これはタウ伝播仮説に基づく病理研究とよく一致した。更に、近年のAD治療薬治験でしばしば議論の対象となる、APOE遺伝子のe4アレルの保持が疾患進行速度に与える影響について解析した。J-ADNI及びNA-ADNIデータから、アミロイドPETまたは脳脊髄液検査でアミロイド陽性の早期AD計649名を抽出し、MMSE、ADAS-cog13、CDR-SBの経時的変化率を混合効果モデルを用いて解析した結果、e4保持群/非保持群の間で進行速度に有意差はなかった。国別の解析、アレル数別の解析でも有意差はなく、神経変性の進行に対するe4アレルの影響は殆どないことが示された。ただし病期別の解析では、late MCI期ではe4保持群の進行がわずかに早い一方でmild AD期では逆に遅く、病期による差の存在が示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件)
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