研究課題
脳アミロイドアンギオパチー(CAA)は脳血管へ主にアミロイドβ蛋白(Aβ)が沈着し、脳血管障害や認知機能障害が生じる疾患だが、CAAの自然歴は不明な点も多い。本研究は皮質微小出血とアミロイドPETの両方が陽性の認知機能正常者をプレクリニカルCAAと定義し、地域在住高齢者におけるプレクリニカルCAAの前向き縦断研究を行い、プレクリニカルCAAの有病率及び症候性・無症候性の脳血管障害及び認知機能障害の発症リスクと危険因子・防御因子を明らかにする。また、プレクリニカルCAAに関する血液バイオマーカーを開発する。平成30年度は認知症の前向き地域コホート研究(地域在住60歳以上対象)で大脳あるいは小脳皮質のみに限局する微小出血(CAA型微小出血)を示す健常者を抽出した。平成31年3月までに認知機能検査とMRI(T2*画像を含む)とを1137名で実施した。CAA型微小出血を認めたのは28名(2.5%)であった。認知機能別のCAA型微小出血例の割合は、正常認知機能(21名/889名: 2.3%)、MCI(4名/205名: 1.9%)、認知症(3名/43名: 7.0%)であった。脳表ヘモジデリン沈着症を認めた例はなかった。CAA型微小出血を認めた認知機能正常者3名についてアミロイドPETを実施し、うち1名で皮質アミロイド沈着をみとめた。CAA型微小出血の有病率は台湾で行われた地域高齢者を対象とした疫学研究の5.1%、ロッテルダム研究の10.9 %と比べて少なかった。平成31年以降は、皮質のみに微小出血を認めた認知機能健常者について引き続きアミロイドPETを実施し、プレクリニカルCAA群を同定し追跡調査を実施していく。前向き地域コホート研究で保存して血液検体を用いてプレクリニカルCAA群、微小出血なし群の血液検体を用いて血液バイオマーカーを開発する。
3: やや遅れている
平成29年度に頭部MRI検査〔全国規模で実施している大規模認知症コホート研究(平成28-32年度)の一環として実施〕が予算やMRI搭載車レンタル日程等の都合で検査実施時期が遅れたため、アミロイドPET検査の対象者抽出が遅くなった。平成31年度はアミロイドPETをなるべく多く実施し、プレクリニカルCAA群の同定、有病率の検討を進めていく。
頭部MRI検査で皮質のみに限局する微小出血を認めた認知機能健常者についてアミロイドPETを実施し、微小出血部位にアミロイドの沈着がみられるかを確認する(皮質微小出血とアミロイドPETの両方が陽性の認知機能正常者をプレクリニカルCAA群と定義する)。同定したプレクリニカルCAAと合わせて追跡調査を実施していく。前向き地域コホート研究で保存して血液検体を用いてプレクリニカルCAA群、微小出血なし群の血液検体を用いて血液バイオマーカーを開発する。
頭部MRI検査の時期が遅くなったため、アミロイドPET検査の対象者抽出が遅くなり平成30年度はアミロイドPETを少数例でしか実施できなかった。平成31年度に行うアミロイドPETの費用及びPET検査施設までの送迎費用として使用予定である。
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