研究課題
パーキンソン病(PD)のすくみ足(FOG)に関連する因子を抽出するためデータベースを構築した.自記式質問票(NFOG-Q)や規定コース歩行によりFOGを評価し,UPDRSスコアにより運動機能や非運動症状としてうつ症状,意欲,睡眠,眠気,レム睡眠行動異常,疲労,認知機能を各種スケールで評価した.脳脊髄液バイオマーカーも評価項目に追加した.①すくみ足の縦断的検討では,2度以上の臨床評価が可能であった168名のPD患者を対象に,平均15.7ヵ月で観察期間でフォローアップした.ベースライン時のFOG陰性群79名の内59名が陰性のまま経過(陰性持続群)し,20名が新規にFOGを発症(新規発症群)していた.ベースライン時のFOG陽性群89名のうち78名がFOG陽性のまま経過(陽性持続群)し,11名は消失(消失群)していた. 陰性持続群と比較して新規発症群ではベースライン時のPIGDスコアが有意に高値であった.消失群と比較して陽性持続群はベースライン時のNFOG-Q,レボドパ換算1日需要量,ESSのスコアが有意に低値であった.経過観察中に25%が新規にFOGを発症し,12%は消失していた,FOG新規発症には体軸症状の重症度,消失にはFOG重症度,治療薬量,睡眠障害の関連性が示唆された.②脳脊髄液バイオマーカーの検討では,76名のPD病患者の脳脊髄液のバイオマーカーであるアミロイドβ42,リン酸タウ蛋白,総タウ蛋白の測定データとFOGとの関連性を検討した.56名がFOG陽性であり20名は陰性であった.陰性群と陽性群を比較したところ,脳脊髄液リン酸タウ蛋白(p-tau)や総タウ蛋白濃度には有意な差は認められなかったが、陽性群では脳脊髄液Aβ42濃度は有意に低下しており,また,NFOG-Qスコアと負の相関関係を認めており,FOGには脳内アミロイドβが影響している可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
パーキンソン病患者の症状評価を行い,縦断的な臨床データを順調に蓄積してきた.データベースを基に,パーキンソン病のすくみ足の症状の推移を明らかし,すくみ足の新規発症に関連する因子を縦断的に検討することができた.また,脳脊髄液バイオマーカーとすくみ足の関連性も検討することができ,新たな知見も見いだされたため,概ね順調に進展していると思われる.
パーキンソン病の臨床症状を中心としたデータベースが構築され,すくみ足の縦断的な症状推移や新規発症すくみ足の関連因子の解析が可能となった.今後は,装着したデバイスにより運動機能評価(Mobility Lab)データとの解析を加え,新規発症したすくみ足の危険因子,重症化に関する因子をさらに絞り込む.また,早期のすくみ足症状を客観的に捉えることのできる臨床マーカーを探索していく.
これまで解析した研究結果については論文発表を予定しているため,論文作成のための費用として次年度の繰越金とした.
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