研究課題/領域番号 |
17K09803
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
今井 富裕 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (40231162)
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研究分担者 |
山本 大輔 札幌医科大学, 医学部, 助教 (00514556)
廣瀬 文吾 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (40808151)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミオパチー / 集中治療 / 重症疾患 / 興奮収縮連関 / 加速度計 / 複合筋活動電位 |
研究実績の概要 |
当初の計画通りに正中神経を電気刺激することによって経時的に検査できたICU関連筋力低下(ICUAW)症例は5例であった.belly-tendon法で記録した短母指外転筋(APB)の複合筋活動電位(CMAP)から測定した運動神経伝導速度(MCV)と,示指に装着したリング電極で記録した正中感覚神経活動電位(SNAP)から測定した感覚神経伝導速度(SCV)の結果から,末梢神経障害が主体であると考えられる重症疾患多発ニューロパチー(CIP)の病型と筋障害が主体であると考えられる重症疾患多発ミオパチー(CIM)に分類された(学会発表).ただし,これらの手内筋を被検筋とする方法では,興奮収縮連関障害を明らかにすることはできなかった.また,これらの症例ではいずれもICU入室後3日以内にCIP/CIMが発症しており,リハビリテーションの介入は超早期から行うべきであると考えられた. 一般にICUAWの筋力低下は下肢優位で,リハビリテーションも下肢筋を中心に行われる. そこで,下腿三頭筋の興奮収縮連関時間(ECCT)測定法を考案した(雑誌論文).膝窩で脛骨神経を最大上刺激し,ヒラメ筋腹上に設置した記録電極でCMAPを記録し,同時に母趾に装着した加速度計で運動誘発波形(MRP)を記録した.APBと同様にCMAPとMRPの潜時差からECCTを,MRP振幅から底屈の最大加速度を測定した.下肢のSNAPは腓腹神経から記録した.この方法で,8例を検査したところ,発症初期からECCTの延長をとらえることができた.現在,臨床症状と電気生理学的検査データの推移を追跡している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ICUAWの診断基準が曖昧であった.現在は,1)重症疾患罹患後の全身の筋力低下,2)びまん性の筋力低下(近位,遠位筋),対称性,弛緩性,脳神経は障害されない,3)MRCスコア<48,4)人口呼吸管理,5)原疾患以外に筋力低下をきたす原因がないの5項目のうち,1)2)3)を満たし,かつ4)か5)を満たす症例をICUAWと診断しているが,この診断基準を満たす症例の発症率が当初の予想より少なかった. 障害度やリハビリテーションの介入の面から,被検筋を下肢筋に変更する必要があった.本研究初年度に下腿三頭筋を被検筋とするECCT測定法が確立され,当初の手内筋を被検筋とした検査法と一緒に実施している.
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今後の研究の推進方策 |
今後,下肢筋を対象として研究を進めていく必要があるが,現在用いている下腿三頭筋を被検筋とするECCT測定法には,年齢を対応させた正常値が存在しない.したがって,新たに健常者を対象として正常値を構築し,検査の結果の判定に用いる必要がある. ECCTあるいはMRP振幅と被検筋力の関係は咬筋以外では明らかにされていない.今後,下腿三頭筋を対象として,筋力,ECCT,MRPの相関の有無を調べる必要がある.ECCTあるいはMRPと筋力に有意な相関関係がみられるようならば,意識障害のため筋力評価ができない症例の筋力をECCTやMRPを測定することによって推定できる可能性がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究におけるICUAW診断基準の策定が遅れたために患者登録が遅れ,かつ,この診断基準を満たす症例の発症率が当初の予想より少なかった.このため,研究成果の発表のために計上していた旅費などが未使用になった. 次年度は被検筋が増えたために当初の計画よりも多くの物品費が必要となる.さらに,前年度までの研究成果の発表や研究打ち合わせのために必要な旅費などの増額が見込まれる.
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