研究課題/領域番号 |
17K09805
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
児矢野 繁 横浜市立大学, 医学研究科, 客員教授 (50315818)
|
研究分担者 |
田中 章景 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30378012)
多田 美紀子 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30722467)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 多系統萎縮症 / 活性酸素 / 尿酸トランスポーター |
研究実績の概要 |
多系統萎縮症患者の発症年齢,罹病期間,予後などの臨床所見を解析し,尿酸トランスポーター遺伝子多型の臨床的特徴を検討した.対象はMSAの診断基準を満たしている患者160例(男82例、女78例)で発症年齢は41-86歳(平均61.1歳)、経過は1-23年(平均5.8年)、病型別にはMSA-Cが100例、MSA-Pが60例であった。これらの症例の血清の尿酸値および髄液の尿酸値と臨床的な関連性、さらに比較および疾患対照群としてパーキンソン病(PD)100例及びその他の変性疾患群(PSP, CBD, ALS)50例における血清および髄液の尿酸値を検討した。 【結果】MSAの血清尿酸値は160例中48例(30%)で低値を示した。このうち血清尿酸値が2mg/dl以下は15例(9.4%)であった。血清尿酸値は経過が長いほど、障害の程度が強いほど低値を示した。髄液の尿酸値では有意差はないもののMSAにおいて低い傾向が認められた。MSAの病型別の検討では血清尿酸値の頻度はMSA-Cで100例中26例(26%)(2mg/dl以下は5例(5%)), MSA-Pで60例中22例(37%)(2mg/dl以下は10例(17%))と明らかにMSA-Pのほうが血清尿酸値は低い傾向を示していた.その他の変性疾患ではPDで100例中33例(33%)と血清尿酸値は低い傾向にあり、MSAと同等であった。他の疾患群では血清尿酸値の異常は認められなかった。MSAでは血清尿酸値は経過とともに低くなる傾向にあり、特にMSA-Pで顕著であった。パーキンソン病でも血清尿酸値が低い傾向にあることから,パーキンソン病とMSA-Pの低尿酸血症には共通の要因が関連している可能性があることがわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多系統萎縮症の患者において血清尿酸値が正常と比較して低下していること,他の神経疾患(パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症,多発性硬化症,脳血管障害)と比較しても低下の程度は同等かあるいは大きいことを確認している。これをさらに発展させ、多系統萎縮症の中でMSA-PやMSA-Cといった病型別に差があるか否かを確認し,さらに血清尿酸値と発症年齢,臨床所見,罹病期間,予後などとの相関を解析し,多系統萎縮症と血清尿酸値の臨床的関連性を詳細に検討している.
|
今後の研究の推進方策 |
各種尿酸トランスポーターの単塩基多型(SNP)解析を行い,多系統萎縮症における疾患関連遺伝子候補を同定する.同定した尿酸トランスポーターの活性を評価するとともに尿酸トランスポーター遺伝子多型と多系統萎縮症患者の発症年齢,罹病期間,予後などの臨床所見を解析し,尿酸トランスポーター遺伝子多型の臨床的意義を確立する。さらに尿酸および尿酸トランスポーター関連蛋白の脳内分布を明らかにする.多系統萎縮症の病変部位では活性酸素のスカベンジャーとしての機能を持つ尿酸の濃度の低下が予想され,さらに尿酸トランスポーター関連蛋白のα-synuclein陽性グリア細胞内嗜銀性封入体内での発現などを確認することで,多系統萎縮症の病変形成に係わる尿酸病態を解明する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度予想されていた各疾患ごとの遺伝子検索にかかる費用が,まだ十分に施行されていなかったため (使用計画) 次年度以降は各疾患ごとの遺伝子検索および尿酸および尿酸トランスポーター関連蛋白の抗体を利用して脳内分布を明らかにするために使用する.さらに尿酸トランスポーター関連蛋白のα-synuclein陽性グリア細胞内嗜銀性封入体内での発現などを確認するために免疫染色,ウェスタンブロットにかかる費用にあてる.
|