研究実績の概要 |
神経疾患と尿酸値との関係は以前から疫学的にパーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症,多発性硬化症などについて報告されてきた.特に病態に酸化ストレスの関与が指摘される疾患については,抗酸化作用をもつ尿酸が低値であることが病態機序に関連している可能性があるとされている.神経疾患の中で多系統萎縮症や遺伝性の脊髄小脳変性症も病態に酸化ストレスの関連が指摘される疾患である.そこで,本研究では多系統萎縮症における尿酸の関与を臨床学的,遺伝学的,病理学的側面から多面的に解析し,さらに病型別および他の疾患との比較検討をおこなうことでその病態を明らかにし,治療標的分子を同定することを目的とした.多系統萎縮症の診断基準を満たす患者160例(男82例、女78例),発症年齢41-86歳(平均61.1歳)、経過1-23年(平均5.8年)、病型別にはMSA-C100例、MSA-P60例を対象として解析を行う。これらの症例の血清の尿酸値および髄液尿酸値と各種臨床データの関連性を検討し、さらに比較のため疾患対照群としてパーキンソン病(PD)100例及びその他の神経疾患群(MS, PSP, CBD, ALS,脳血管障害)各50例においても解析を行った。さらに多系統萎縮症の診断基準を満たす患者の剖検脳40例(MSA-C:22例, MSA-P:18例)を有していることから,尿酸および尿酸トランスポーターの発現部位の分布を調べた結果、多系統萎縮症ではその病変と尿酸トランスポーター関連蛋白の脳内分布を一致していたことを確認し、α-synuclein陽性グリア細胞内嗜銀性封入体内にも尿酸トランスポーター関連蛋白が発現することが判明した。
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