研究課題
骨格筋再生の促進は、筋疾患の治療や高齢者の廃用性筋萎縮を予防する観点からも重要である。これまで、私たちは、カルパインや、ウロキナーゼが骨格筋再生において重要な働きをなすことを報告してきた。本研究では、Transient receptor potential (TRP) チャンネルファミリーの一つであるTRPV1に注目した。TRPV1は、痛み刺激など感覚刺激の伝達に関係すると言われているが、今回筋芽細胞増殖作用を応用し、筋再生を予測するバイオマーカーの開発をめざしている、さらに筋萎縮を予防するリハビリ訓練法を確立し、高齢化社会で問題となるサルコペニアの予防に寄与したい。本研究の目的は、骨格筋再生のバイオマーカーを探索し筋疾患や廃用による筋萎縮を予防し、筋再生を促す治療法を確立することにある。申請者らは、Transient receptor potential(TRP)チャンネルファミリーのひとつのTRPV1に注目し、各種筋疾患や筋損傷モデルマウスの生検筋を用いて病理学的・生化学的・分子生物学的に手法にてバイオマーカーとしての有用性を検討する。そして、筋萎縮モデルにTPPV1アゴニストを投与し、筋萎縮予防効果を検討する。また、高齢者の運動能力改善を目的に下肢筋萎縮を予防する等尺性運動プログラムを考案し、TRPV1をバイオマーカーとして訓練を行う。次に、訓練を継続して行う事を目的に、ゲーム理論を用いた訓練法を用い、楽しみながら遂行できる体操運動プログラム開発を行う。
3: やや遅れている
デキサメタゾンを経口投与したステロイドミオパチーモデル、後脚をギブス固定した廃用性筋モデルを作製する。筋障害部にカプサイシンを投与し、筋力回復過程での運動量、運動負荷時の耐久力を臨床評価後下肢筋萎縮の程度を病理学的・生化学的・分子生物学的に解析し、その関連性を検討している。体重支持指数0.4前後(通常歩行可能な程度)の健常高齢者を対象に下肢等尺運動の筋力増強プログラムを作成し、訓練を施行する。下肢筋力は等尺性筋力評価が可能なCybex®を用いて継時的に計測し、筋萎縮の評価は従来の各種画像検査に加えELISA法による血清中のTRPV1, カプサイシンをELISA法で定量的に評価し、筋力の増強の推移と比較検討する。現在、骨格筋培養にてTRPV1を投与して、筋芽細胞から筋管細胞への変化を検討中だが、培養の条件がうまく見つかれず、方法を模索している。
当科は約500例の凍結生検筋・血清の保存バンク(匿名化)を有している。治療介入した炎症性筋疾患150例を対象に ①罹病期間・筋萎縮・筋力低下の分布などの臨床特徴 ②血液検査・電気生理学的検査(針筋電図など)各種画像検査(骨格筋MRI, エコー)③治療(ステロイド治療・リハビリテーション)反応性と機能予後を再評価中である。炎症細胞浸潤、筋壊死・再生の評価と筋線維直径の計測による萎縮筋の経時的変化や遅筋と速筋の筋線維タイプの存在比率を検討する。再生筋のマーカーや抗TRPV1 抗体、抗カプサイシン抗体を用い免疫染色を行い、発現パターンの経時的変化を検討する。凍結生検筋をホモジェナイズし、抗TRPV1・抗カプサイシン抗体によるWestern blot法をおこない筋線維内の発現を蛋白レベルで検討している。
各種実験資材は、本研究室が保有しているものを使用している。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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