高齢者てんかんの臨床的特徴を明らかにし、国内および国際学会で研究結果を発表し、専門誌に成果を発表した。てんかん診療ガイドラインに治療法において研究結果を反映することができた。 本研究で明らかにされた高齢者てんかんの特徴は以下の通りである。①側頭葉てんかんが多く、発作はけいれんをきたさない焦点意識減損焦点発作(複雑部分発作)が半数を占める。②高齢者のけいれん発作は焦点起始が90%以上を占める。③てんかん発作焦点は側頭葉が70%を占め、次いで前頭葉が多い。④てんかんの原因は脳卒中が最も多く、認知症、脳炎などの炎症性疾患、頭部外傷、脳腫瘍がみられる。⑤約半数ではてんかんの原因が不明である非病変性側頭葉てんかんである。⑥住民調査では高齢者の1%がてんかんに罹患しており、日本では約40万人の患者が存在する。⑦高齢者てんかんの治療では、抗てんかん薬による治療反応性が高い。⑧高齢者てんかんでは併存・合併疾患があることが多く、治療においては薬物相互作用の少ない新規抗てんかん薬が有用である。⑨高齢者の側頭葉てんかんは認知症と合併することがあり、認知症症状と誤認され適切な治療が遅れることがある。 高齢者のてんかんの特徴を理解して高齢者の診療にあたることによって、高齢者のてんかんを早期に発見し適切に治療することにより、合併症のみならず社会的損失を回避できると考えられる。 今後高齢者てんかんについて医療者のみならず一般市民にも広く啓蒙して高齢者のQOLを向上につなげる基礎的データを本研究で得ることができた。
|