非侵襲刺激によるヒトの大脳神経可塑性誘導と神経疾患の症状との関連を詳細に解明する研究を昨年に引き続き検討を行った。非侵襲刺激は、今年度も反復磁気刺激法の一つである4連発磁気刺激法を用いた。 まず、パーキンソン病における大脳の神経可塑性誘導の変化が、パーキンソン病の臨床症状と関連があるという新しい知見を得ることができた。この結果を確定するために症例数を増やした。さらに、抗パーキンソン病薬であるレボドパの内服により、神経可塑性誘導変化は正常化の傾向が得た。そして、その正常化は内服の効果よりも症状改善効果に依存していることを初めて見出した。この結果により、治療効果の客観的な指標として用いることができる可能性があることを示すものであり、大変意義深い。また、運動野の神経の可塑性変化異常が、パーキンソン病の臨床症状の発生に関係あることも示唆しており、パーキンソン病の症状の病態機序を解明する重要な結果であった。 一方、パーキンソン病の類縁疾患でパーキンソン症候群の一つである進行性核上性麻痺では、神経症状とは無関係に大脳の神経可塑性誘導の導出が障害されているという結果をえた。また、症状との関係もパーキンソン病とは異なる傾向を示すことを見出した。この結果は、同様の症状を示す疾患でも、神経疾患の原因により大脳神経可塑性誘導に与えている変化が異なることをしめしており、病態の違いの解明に役立てられるものである。また、鑑別が困難な両疾患の初期の診断の鑑別に役立てることができる可能性があると考えられた。これらは重要な知見と考えられ、国内外の学会にて発表を行った。
|