研究課題/領域番号 |
17K09812
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
瀧澤 俊也 東海大学, 医学部, 教授 (70197234)
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研究分担者 |
永田 栄一郎 東海大学, 医学部, 教授 (00255457)
浅原 孝之 東海大学, 医学部, 教授 (20246200)
増田 治史 東海大学, 医学部, 准教授 (50278496)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経再生 / 脳梗塞 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
【目的】我々は血管再生能に富み良質な血管内皮前駆細胞を含む再生アソシエイト細胞の培養法を新たに開発し、基礎研究で脳梗塞巣の縮小効果を確認した(PLoS One, 2019)。H30年度はヒト脳梗塞患者に自己血培養した再生アソシエイト細胞の静注移植治療を前提にして、静脈採血の再生アソシエイト細胞動態解析を行った。 【方法】脳梗塞患者24人および健常人23人から静脈採血して、QQ培養前後での再生アソシエイト細胞動態解析を行った(臨審委第12R-068号承認済)。具体的には、CD34陽性細胞内未分化EPC分画を採取し、EPC分化増幅培養を行い、培養各時点における内皮系表面マーカーによる培養EPCのFACS解析及びEPC-CFAによる未分化型・分化型EPCコロニー数、細胞培養の培養上清に対しサイトカインアレイ(Ray Bio社キット)を行い、サイトカイン(MCP1, IL-8, IL-10, TIMP1, RANTES, etc.)を測定した。 【結果】この良質な血管内皮前駆細胞を増やすQQ培養法では、健常者同様に脳梗塞患者(Day 3,Day10)ともにLarge Cell Colonyを増加させた。健常人と同様にヒト脳梗塞患者Day 3 およびDay 10の静脈血においてCD34陽性細胞・CD133・CD206陽性細胞を有意に増加させ、IL-10を増加させた。またサイトカインアレイを用いた検討では、QQ培養法により脳梗塞患者(Day 3, Day 10)ともにTIMP1, CRPが有意に増加し、RANTESは増加傾向を認めた。 【総括】これらの結果より、再生アソシエイト細胞移植は、脳梗塞患者の血管内皮前駆細胞の分化増幅を促進し、血管再生効果、抗炎症効果をもつ培養細胞群として、“極めて良好な血管再生環境”を生み出すことが確認された。今後は、脳梗塞の病型、基礎疾患、MRAや頸動脈エコーなどによる頸動脈や頭蓋内動脈狭窄、脳梗塞病型および重症度と、再生アソシエイト細胞の動態との関連について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度は、これまで動物実験で再生アソシエイト細胞の治療効果を検討した論文を英文誌に発表をすることができた。Nakayama T, Nagata E, Masuda H, Asahara T, Takizawa S. Regeneration-associated cell transplantation contributes to tissue recovery in mice with acute ischemic stroke. PLoS One. 2019 Jan 25;14(1):e0210198.
加えて、脳梗塞患者の静脈血を用いた細胞プロファイリングの解析を行い、再生アソシエイト細胞群の血管再生効果、抗炎症効果が示され、“極めて良好な血管再生環境”を生み出すことが確認された。以上のごとく動物実験およびヒト脳梗塞患者静脈血の解析結果より、本研究は概ね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、脳梗塞患者に対し発症3日、7日、14日後に静脈採血し、FACSによる細胞表面マーカー(CD34, VEGF, CD133, CD14, CD3, CD206, CCR2)のプロファイリング、colony数を測定し、age-matched健常者20人と比較検討する。また、細胞培養の培養上清を用いてサイトカインアレイ(Ray Bio社キット)解析を行い、QQ培養前後でサイトカイン(MCP1, IL-8, IL-10, TIMP1, RANTES)、酸化ストレス/内皮マーカー(hCRP、T. chol、TG、HDL、LDL、PAI-I、HbA1c、VEGF、Endostatin)の変動を解析する。また脳梗塞の病型、基礎疾患、MRAや頸動脈エコーなどによる頸動脈や頭蓋内動脈狭窄、脳梗塞病型および重症度と、再生アソシエイト細胞の動態との関連について検討する。更に、自家血再生アソシエイト細胞移植の臨床応用の実現性を検証すべく、第1相臨床研究を開始したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の概算額と確定金額の差額により生じた。次年度試薬および実験消耗品を購入する費用に加算する予定である。 次年度の使用計画:1,307,892円
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