研究課題
本研究では異なるタウPETイメージングトレーサー、[C-11]PBB3と[F-18]THK5351の集積特性や分布の違いを検討し、タウイメージングの診断的意義を検証することを目的としている。そのため、同一被験者において2つのタウPETイメージングを実施し、直接比較するとともに、両タウPET診断薬による画像データを集積し、横断的画像情報から健常者における加齢変化をそれぞれ推定し、特にprimary age related tauopathy (PART)とアルツハイマー病(AD)やAD以外のタウオパチーの関係を明らかにすること、また、可能な限り剖検症例を蓄積し、生前のPET画像と病理所見の対比を行い、集積の意義を確認することが目的である。平成29年度は[C-11]THK5351の臨床撮像を立ち上げ、年度末までに総計61件の画像を集積した。[C-11]PBB3については113例の画像を集積した。これらの内、[C-11]PBB3と[F-18]THK5351の両者を実施できた症例は11例である。内訳は認知機能正常者4例、AD1例、進行性核上性麻痺(PSP)5例、筋萎縮性側索硬化症(ALS)1例である。更にその内3例については経過観察中に死亡し、剖検が得られた。今後病理所見と生前の画像の対比を進める。[C-11]PBB3は健常者において線条体、脈絡叢に非特異的集積を認め、水溶性代謝物を反映した血管内の放射能が高かった。一方[F-18]THK5351は視床、基底核、黒質、中脳水道周辺、脳幹の一部に非特異的集積が認められた。疾患例における両トレーサーの集積分布はやや異なり、[C-11]PBB3はアミロイドβの集積の影響を受け、[F-18]THK5351は変性に伴うgliosisへの集積の影響を受けているためと考えられた。次年度は更に症例を蓄積して詳細な解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
[C-11]PBB3の臨床研究は既に開始し、既に100例近い症例の蓄積を有していたが、[F-18]THK5351は本研究のために薬剤合成と撮像体制を立ち上げた。平成29年度中に臨床検査を開始し、順調に症例を蓄積することができた。また、既に3例の剖検例も得られており、本研究の目標を達するためのデータの蓄積は順調に進んでいる。また、[F-18]THK5351の非特異的集積に関する研究も合わせて進めることができた。剖検脳標本を用いた結合実験により、[F-18]THK5351がメラニンに集積することを確認し、論文投稿中である。黒質への[F-18]THK5351集積はメラニン含有細胞への集積であることを明らかにすることができた。
今後更に症例を追加し、加齢に伴う変化であるPARTを両トレーサーで検出可能かどうかを検討する。また、同一被験者における比較症例を更に加え、アミロイド病理、タウ病理、非アミロイド非タウ病理と両トレーサーの集積の関係を明らかにしてゆきたい。また、脳梗塞による錐体路障害によりワーラー変性を伴う症例で、[F-18]THK-5351が変性した錐体路に沿って集積することを発見した。これはワーラー変性に伴うgliosisを反映した集積と考えられ、glia細胞に特異的に発現しているMAO-Bへの集積によるものと考えられた。このことより、[F-18]THK5351は変性の局在を示すグリアマーカーとしても有望であると考えられた。今後、非AD型変性疾患の症例を蓄積し、検討を進める。
平成29年度は[F-18]THK5351の検査立ち上げと、PET画像の集積を中心に努力した。集積した画像データの詳細な解析を平成30年度以降に進めるため、平成29年度に残した次年度使用額と平成30年度の研究費を合わせ、PET画像解析専用ソフトの購入に充てる予定である。
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