研究課題
本研究ては異なるタウPETイメージングトレーサー、[C-11]PBB3と[F-18]THK5351の集積特性や分布の違いを検討し、タウイメージングの診断的意義を検証することを目的としている。両タウPET診断薬による画像データを集積し、横断的画像情報から両トレーサーの集積特性を明らかにすること、また、可能な限り剖検症例を蓄積し、生前のPET画像と病理所見の対比を行う。平成30年度末まで[F-18]THK5351について98件、[C-11]PBB3については125例の画像を集積した。これらの内、[C-11]PBB3と[F-18]THK5351の両者を実施できた症例は18例である。内訳は認知機能正常者6例、AD2例、進行性核上性麻痺(PSP)5例、大脳皮質基底核変性症(CBD)2例、前頭側頭葉変性症:進行性非流暢性失語症(FTLD:PNFA)1例、嗜銀顆粒性疾患(AGD)1例、筋萎縮性側索硬化症(ALS)1例、である。[C-11]PBB3実施例の内8例、[F-18]THK5351実施例の内5例で剖検が得られ、うち3例は[C-11]PBB3と[F-18]THK5351を実施しており、画像病理の両者で直接比較が可能である。[F-18]THK5351はmonoamineoxidaze-B(MAO-B)への結合性によりgliosisを感度良く描出できることがわかり、脳血管障害後のWaller変性や神経膠芽腫への集積があることを明らかにし、報告した。[C-11]PBB3ではアミロイド陰性(A-)例でPBB3集積陽性(T+)があるものの、アミロイド陽性(A+)例ではPBB3陰性(T-)例は存在せず、全てA+T+であった。このことから、[C-11]PBB3はアミロイドへのクロス集積が疑われる。次年度は更に詳細な解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
研究開始から2年間で、延べ200例余りのタウPETを実施、両検査をhead to headで比較できるデータも18例集積した。剖検例は10例あり、うち3例は生前に両タウPETを実施している。これらのデータを解析し、画像病理相関に関する論文と、症例報告を英文で発表した。
[C-11]PBB3と[F-18]THK5351はそれぞれに非特異的結合(off-target binding)が存在し、タウ標識診断薬としての限界も明らかとなったが、健常者データベースに基づいて統計学的手法により、非特異集積と特異集積を分け、特異集積部分を評価する解析ツールを開発中であり、最終年度にその有用性の検証も合わせて行う。
症例の蓄積は順調に進んでいる。研究検査に2台のPET/CT撮像装置を同時使用することが可能になったため、PET診断薬1合成あたりの検査件数を当初の予定より増やすことができ、検査にかかるコストを軽減できた。新たな解析法を開発中であり、次年度使用額を解析費用に充てることにより、より高度な解析を加え、研究目的の達成を図る。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件)
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