研究課題
脳内アミロイド蓄積は、アルツハイマー病で認知機能障害を引き起こす鍵となる病理変化である。アルツハイマー病モデル動物では、脳血管病変による慢性脳虚血がアミロイド蓄積を増加させる。本研究の目的は、脳主幹動脈閉塞症患者を対象とし、PETにより脳循環代謝とアミロイド蓄積の両者を評価し、慢性脳虚血とアミロイド蓄積の関連性を検討し、慢性脳虚血がアミロイド蓄積に寄与するかどうかを明らかにすることである。まず、アミロイド蓄積と脳循環障害の関係について、横断的研究を行なった。片側性に、内頸あるいは中大脳動脈に狭窄または閉塞を有し、大脳皮質に梗塞のない患者13例を対象とし、PETと[18F]FPYBF-2を用いて、アミロイド蓄積量を求めた。dynamic dataを用い、Logan graphical analysisにより,distributionvolume ratio(DVR) を計算した.DVR大脳皮質半球平均値と15O-Gasを用いて求めた脳血流量、酸素代謝率、酸素摂取率との関係を検討した。病変側半球のアミロイド蓄積量は、酸素摂取率増加と関連していた。慢性脳虚血は、軽度ではあるが、アミロイド蓄積増加に寄与している可能性が示唆された。その後、症例を追加して、横断的に、軽度のアミロイド集積増加と酸素摂取率増加との関連を確認した。さらに、今年度は、脳主幹動脈閉塞の長期存在とアミロイド蓄積増加との関係を検討した。診断後平均15年間経過した、5例の脳主幹動脈閉塞症で、経過中の酸素摂取率増加が明らかでなかった例で、アミロイド蓄積を評価したところ陽性例は一例もなかった。酸素摂取率増加がなければ、脳主幹動脈閉塞が長期存在しても、アミロイド蓄積増加は生じないことが明らかになった。慢性脳虚血がアミロイド蓄積増加に必須であることが示された。
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Neuropsychiatric Disease and Treatment
巻: Volume 16 ページ: 2719~2732
10.2147/NDT.S268504
http://www.shigamed.jp/