研究課題
本研究の目的は我々が同定した筋芽細胞分泌たんぱくであるR3hdmlの骨格筋や肝臓における役割を明らかにすること目的とした。骨格筋における役割:活性化した筋衛星細胞(筋芽細胞)から分泌されるR3hdmlは一部IGF-1シグナルの増強と筋衛星細胞のニッシェ構成成分であるフィブロネクチンの発現調節差作用を介して筋衛星細胞の増殖や分化を促し、骨格筋の発達や再生に重要な役割を果たすことをin vivo、in vitroで証明した。肝臓における役割:R3dmlノックアウトマウスにコリン欠乏高脂肪食飼料を与えた所、野生型に比して著明な脂肪肝をきたし、肝臓におけるコレステロールや脂肪酸の蓄積が観察された。一方、R3hdmlをアデノウイルスベクターを用いて肝臓に過剰発現させた後、ストレプトゾトシン(STZ)を投与し糖尿病を惹起した際の糖代謝や生存曲線に与える影響を検討した所、R3hdml過剰の有無により空腹時血糖値に差はなかったものの、R3hdml過剰マウスで有意な生存曲線の延長が観察された。次に分泌されたR3hdmlと脂質代謝との関連を調べた。R3hdmlを過剰発現した肝臓では脂質代謝のマスターレギュレーター膜結合型転写因子SREBPの発現が低下することやR3hdmlを過剰発現した肝細胞では飽和脂肪酸の一種、パルミチン添加に伴う細胞障害が軽減されることが明らかとなった。以上の結果より、活性化した筋衛星細胞から分泌される新しい因子R3hdmlは骨格筋そのものにオートクライン、パラクラインに働くことに加えて、肝脂質代謝にも関与する新たな代謝関連因子であることが示唆された。今後はさらにR3hdmlの機能を分子レベルて明らかにし、代謝関連疾患の治療法開発に結びつけたい。
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