顆粒球特異的にEGFPを発現する遺伝性肥満マウス(ob/ob; Lysozyme M-EGFPマウス)の生体イメージングにより、対照の非肥満マウス(WT; Lysozyme M-EGFPマウス)と比較して多数の顆粒球が肝類洞に接着し、肝臓内に浸潤していることを見出した。肥満マウスの肝類洞内皮細胞(LSEC)では、ケモカインや炎症性サイトカイン、接着因子の遺伝子発現が上昇し、LSECの細胞表面において接着因子のひとつであるVCAM-1(vascular cell adhesion protein-1)の発現が増加し、VCAM-1と結合するVLA-4(very late antigen-4)を介した白血球との細胞接着が亢進していることを明らかにした。肥満マウスにVLA-4の阻害抗体を投与すると、顆粒球とLSECの接着および肝臓への白血球の浸潤が抑制され、高血糖が改善した。肥満マウスの肝臓では浸潤した白血球が肝細胞と接触している様子が電子顕微鏡で観察され、マウス肝臓内の白血球と肝細胞を実際に接触させて培養すると肝細胞からの糖の産生が増加した。この時、細胞同士の接触により活性化されるシグナルであるNotchシグナルを介して、糖の産生を促進する酵素(グルコース-6-ホスファターゼ)の遺伝子発現が増加することがわかり、肝臓に浸潤した白血球が肝細胞と接触し、Notchシグナルを活性化して高血糖を引き起こす機構が解明された。 本研究により、肥満を原因とする糖代謝異常において、LSECと白血球とのVLA-4を介した細胞接着、および浸潤白血球と肝細胞とのNotchシグナルを介した細胞接触の意義が明らかとなった。
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