研究課題
腸内細菌叢がエネルギー代謝や糖代謝に影響を与えることが知られている。我々はインスリン抵抗性と相関のある腸内細菌由来代謝産物Indoxysulfate(IS)に着目した。前年度までの検討で高脂肪食負荷マウスにISを投与すると肝、脂肪組織などの慢性炎症が惹起され、糖代謝が悪化することを見出していた。腹腔内マクロファージにISを添加し、免疫細胞の炎症極性に直接的な作用があるかを検討したが、差が認められなかった。普通食マウス、高脂肪食負荷マウスにISの吸収阻害剤であるAST-120を添加すると、とくに普通食群において、内臓脂肪量を顕著に減少させ、耐糖能を有意に改善させた。遺伝子発現解析では肝においてISにより増加したマクロファージ関連遺伝子がAST-120により低下した。腸内細菌由来のISは肝、脂肪組織の慢性炎症を惹起し、高脂肪食による肥満インスリン抵抗性の増悪因子となる。AST-120はとくに肝において肥満によるマクロファージ浸潤を軽減し、耐糖能を改善させる可能性が示唆された。また、肥満や便秘に臨床使用されている漢方薬、防風通聖散がマウスにおいて腸内細菌叢を変化させ、とくに腸管バリア機能と関連するAkkermansia muchiniphilaを増加させることを見出した。これにより肥満により脆弱化した腸管バリア機能が回復し、metabolic endotoxemiaの病態が改善してインスリン抵抗性、耐糖能が改善することを報告し、Scientific Reports誌に掲載された。
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Sci Rep.
巻: 10 ページ: 5544
10.1038/s41598-020-62506-w.