研究課題/領域番号 |
17K09822
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
菊地 晶裕 金沢大学, 医学系, 博士研究員 (90321752)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 2型糖尿病 / ヘパトカイン / セレノプロテイン / タンパク質結晶構造解析 / タンパク質間相互作用解析 |
研究実績の概要 |
ヘパトカインであるセレノプロテインP(SeP)の過剰分泌は、肝臓と骨格筋にインスリン抵抗性を誘導し、2型糖尿病の病態を形成する。本研究では、SePによるインスリン抵抗性誘導作用の阻害剤をSePの結晶構造解析およびSePと受容体との詳細な相互作用解析に基づいて開発することを目指している。
本年度は、分子間相互作用解析装置(Biacore)によりSePと受容体との相互作用解析を行った。特に、先行研究にて骨格筋におけるSePの受容体がLRP1であることを解明していたので、SePとLRP1との相互作用解析を行った。その結果、LRP1に存在する4つのリガンド結合ドメインのうち、SePは特定のリガンド結合ドメインとのみ相互作用することが示唆された。 Biacoreを用いたハイスループットスクリーニングによりSePとLRP1との相互作用を阻害する化合物を見出すことにしたが、LRP1を一般的な方法でセンサーチップに固定した場合、1回膜貫通型の膜タンパク質であるLRP1の性質が担保されない可能性もある。そこで、細胞膜上と同様な環境でLRP1を固定することを目指し、C末にbiotin acceptor sequenceを融合させた受容体を調製し、それをビオチン化することで固定する方法を用いることにした。実際、LRP1と同様にLDL受容体ファミリーに属し、さらに、精巣においてはSePの受容体として機能するApoER2を用いて系を構築して評価を行ったところ、極めて優れた系であることが確認された。今後、SePおよびシステイン置換体SePとApoER2との相互作用解析を、さらに、LRP1を用いても系を構築し、SePとLRP1との詳細な相互作用解析を、次いで、ハイスループットスクリーニングによる阻害剤探索を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で用いた手法により受容体をBiacore用センサーチップに固定する方法は、1回膜貫通型の受容体を細胞膜と同様な環境に固定することが出来るため、タンパク質間相互作用解析に極めて有用であることを確認することができた。本年度のうちに、この方法をLRP1にも適応し、ハイスループットスクリーニングまで行うことを目指していたが、biotin acceptor sequenceを融合させたLRP1の発現量がApoER2などと比べると予想外に低く、センサーチップに固定するほどの精製LRP1を得ることができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
1)相互作用解析 biotin acceptor sequenceを融合させたLRP1の発現ベクターの改良、また、培養条件などの検討を行う。その際、biotin acceptor sequence以外の配列を利用することも検討する。例えば、His-tagをLRP1に融合させれば、NTAが固定されているセンサーチップを用いることで、また、抗体をLRP1に融合させれば、Protein AやProtein Gが固定されているセンサーチップを用いることで、細胞膜と同様な環境に受容体を固定することが可能であるかもしれない。構築できた系を用いて相互作用解析およびハイスループットスクリーニングにまで展開したい。
2)結晶構造解析 システイン置換体SePの結晶化スクリーニングを行ってきたが、結晶化には成功していない。相互作用解析によりSePと相互作用するLRP1のドメインの詳細を解明し、その知見も活用しながらSeP/LRP1(ドメイン)複合体の結晶化スクリーニングを開始したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
既存のタンパク質精製装置が故障しており、本年度中の新規購入を検討していたが、設置場所の兼ね合いにより購入には至らず、交換可能なパーツのみを購入することで使用することになった。そのために次年度使用額が生じた。 しかし、すでにパーツ交換のみでは対処できない不具合も発生しており、翌年度分と合算してタンパク質精製装置一式を購入する計画である。
|