研究課題
野生型マウス(WT)、GIP受容体欠損マウス(GIPRKO)、KATPチャネル欠損マウス(Kir6.2KO)マウスを用いて高炭水化物食(高スターチ食:ST)による体重増加の機序について検討を行った。STを負荷したGIPRKOにおいても、STを負荷したWTと同程度の体重増加を認めた。また、STを負荷したWT、GIPRKOにおいては、通常食(NC)を負荷したWT、GIPRKOと比較して糖負荷試験ならびに単離膵島でのグルコース刺激で、グルコース応答性インスリン分泌が亢進していた。このことから、STによるインスリン分泌増強ならびに体重増加に関してGIPの寄与が少ないと考えられた。STを22週間負荷したWTにおいて膵島数の増加による膵β細胞量の増加がみられた。一方、STを22週間負荷したKir6.2KOにおいて、NCを負荷したKir6.2KOと比較して体重増加と血中インスリン値の上昇を認めたが、膵島数や膵β細胞量は差を認めなかった。すなわち、STによる体重増加は、KATPチャネル非依存的であるが、STによる膵島数・膵β細胞量の増加はKATPチャネル依存的であることが明らかとなった。また単離膵島の遺伝子発現の検討を行った。STを負荷したWTの膵島ではNCを負荷した膵島と比較してcyclinD1、cyclinD2mRNA発現が増加していた。MIN6K8(マウスのインスリノーマ細胞株)を用いて検討を行ったところ、グルコースやKATPチャネル閉鎖薬(スルホニル尿素薬)にてcyclinD2mRNAの発現上昇がみられた。このことから、cyclinD2mRNA制御にKATPチャネルが関与していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究により、炭水化物による体重増加にはGIPではなくインスリンが重要であることが明らかにすることができた。さらに、炭水化物過剰摂取時には、膵島数増加による膵β細胞量の増加が起こること、その機序には、KATPチャネル経路依存的なcyclinD2発現上昇が関与していることも明らかにすることができた。これらの知見をまとめ、海外論文に受理された。
本年度は、高スターチ食負荷マウスにおける膵島数・膵β細胞量の増加に関して継時的変化の検討を行う。また形態変化に関して、膵β細胞の増殖あるいは脱分化の観点からも検討を行う。さらに膵β細胞増殖と肝臓の形態や遺伝子発現との関連に関しても検討を行う予定である。
野生型マウスで施行した実験系が確立されていたこと、前年度からの繰り越し金があったことから、当初想定されていたよりも消耗品が安価となったため未使用額が生じた。また次年度には肝臓や膵島のメタボローム解析のために使用予定である。
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