前年度は高炭水化物食(高スターチ食:ST)による膵島数・膵β細胞量の増加がKATPチャネル 依存性のcyclinD2が関与していることを明らかにした。しかしながら膵島の変化が体重増加によるものかどうか明らかでなかったため本年度は短期間ST負荷の野生型マウス(WT)を用いて検討を行った。5週間の餌負荷ではST群で通常食(NC)群と比較して血糖値や体重変化は見られなかったが膵島数・膵β細胞量の増加を認めた。単離膵島の発現を検討したところ、ST群ではNC群と比較してcyclinA2mRNA、Irs2mRNAの発現上昇がみられた。短期のST負荷による膵β細胞量の増加の機序は長期のST負荷とは異なる可能性が考えられた。 次に7週間の餌負荷を3群で行った(NC7週間負荷、ST7週間負荷、ST5週間負荷した後2週間NC負荷(SN))。7週間の餌負荷においては、3群間で血糖値、体重、耐糖能の差は見られなかったものの、ST群ではNC群やSN群と比較して膵島数や膵β細胞量の増加を認めた。一方、NC群とSN群では膵島数・膵β細胞量に違いを認めなかった。SN群における膵島数・膵β細胞量の経時的変化に関しては現在検討中である。 さらにSTによる膵β細胞量の増加が膵保護作用を示すかを検討するためにストレプトゾトシン(STZ)をしたWTにて検討を行った。STZを投与したST群ではSTZを投与したNC群と比較して 血糖値、体重、血漿インスリン値、耐糖能、膵インスリン含有量に差を認めず、膵β細胞傷害時に、STによる膵β細胞保護効果は示されなかった。
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