研究課題
昨年に引き続きヒトTGF-β1をポドサイトに特異的に過剰発現させたマウス(Podocyte-TGF-β1Tgマウス)が、腎臓の線維化の病態を反映すると考え検討を行った。凝固抑制因子であるプロテインSは抗アポトーシス作用を有するが、密接な関係がある凝固抑制因子であるトロンボモジュリンが本マウスの腎臓の維化抑制に有効であり、詳細な解析を行った。リコンビナントヒトトロンボモジュリン(rhTM)をPodocyte-TGF-β1Tgマウスに投与し、4週間後に解析を行った。腎組織、血中、尿中のヒトTGF-β1の発現と濃度は、rhTMによる影響はなく、腎機能は非投与群に比較して有意な改善を認めた。糸球体硬化症スコアの低下と尿細管間質の線維化の抑制が認められ、線維化マーカー、炎症性サイトカインの発現低下が認められた。アポトーシスについては、カスパーゼ3、BAXの発現抑制、Bcl2、Bcl-XLの発現上昇を認め、またアポトーシス阻害蛋白である、BIRC5、BIRC6の発現上昇を認め、抗アポトーシス作用の関与が推測された。更に、初代ヒトポドサイト培養細胞を用いた検討では、TGF-β1による刺激で、フローサイトメトリーによる解析及びTUNEL染色による解析で、アポトーシスの促進が認められ、カスパーゼ3、BAXの発現上昇を認めた。rhTMの投与によりカスパーゼ3、BAXの発現抑制が認められ、フローサイトメトリー及びTUNEL染色によりアポトーシスの抑制が認められた。rhTMの経路の解析では、GPR15を介する経路が明らかになり、その下流についてrhTM によりAkt、ERKのリン酸化が促進され、カスパーゼ3を抑制することが明らかになった。以上より。TGF-β1による腎臓の線維化の促進に対し、rhTMがGPR15を介する抗アポトーシス作用により抑制する可能性が示唆された。
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