研究課題
1型糖尿病は環境因子の影響で発症リスクが高まるが、その一つとしてウイルス感染症の関連が存在する。特にエンテロウイルスは1型糖尿病の発症に関与している。インターフェロン伝達経路のシグナルタンパクであるチロシンキナーゼ2(TYK2)遺伝子は、ウイルス感染に応答する宿主の免疫機構を構成するが、TYK2の遺伝子変異が、インスリン依存性糖尿病の発症と関連することを、我々はこれまでの1型糖尿病患者及びマウスの検討で同定した。一方で世界的な肥満人口の増加を背景に、2型糖尿病や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は増加している。元来、アジア人の2型糖尿病のインスリン分泌能は欧米人と比較して低下していることが知られているが、TYK2変異とインスリン分泌能の関連は解明されていない。またNAFLDにおいて、インスリン抵抗性は発症や病態の進行と関連していることが知られているが、インスリン分泌能との関連は不明であった。本研究ではTYK2遺伝変異と2型糖尿病やNAFLDの病態、インスリン分泌能との関連を2型糖尿病患者及びNAFLD患者を対象に検討した。2型糖尿病において、TYK2遺伝子変異患者は有意に空腹時インスリン、HOMA-β、Cペプチド及びBMIが低値であり、TYK2遺伝子変異はBMIや年齢と独立して、インスリン分泌能低下に関連する因子であった。またNAFLDにおいて、インスリン分泌能低下は肝線維化進展の独立したリスク因子であった。TYK2遺伝子変異に関して、2型糖尿病と同様の傾向を認めており、現在症例数を追加して検討を継続している。以上の結果から、2型糖尿病やNAFLDにおいて、TYK2遺伝子変異がインスリン分泌能や病態に関与しており、潜在的なウイルス感染と関連して2型糖尿病やNAFLDの病態に影響を与えていることが示唆された。
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