研究課題
研究の目的:糖尿病腎症の発症・進展阻止は、我が国の重要な命題である。近年申請者は、阻害剤やノックアウト(KO)マウスを用いた検討で、細胞内アラキドン酸カスケードに関与する分子であるcPLA2の発現抑制が、マクロファージや大動脈において抗炎症作用・抗動脈硬化作用を発揮することを見出した。一方、糖尿病腎症の発症にはPKCとその下流に位置するcPLA2の関与が示唆されているが、糖尿病腎症に対して、このcPLA2抑制の治療的効果や有用性は確立していない。本研究では、STZを用いて糖尿病を導入したWTマウスとcPLA2欠損マウスを用い、糖尿病腎症発症・進展に対するcPLA2阻害療法の有用性を検討することで、糖尿病腎症発症・進展の新規機序の解明と新たな治療法開発の可能性を見出すことを目的とする。研究の成果:①8週齢のC57BL/6マウスにSTZの腹腔内投与を行い、その2週間後(10週齢)の血糖測定で糖尿病化したことを確認した。②糖尿病化したC57BL/6マウスにAACOCF3(5 mg/kg/日或いはplacebo)を経口投与開始したところ、体重や食餌摂取量、空腹時血糖値、血清脂質値には有意な差を認めなかった。STZ投与後4週、12週、24週時に回収した腎の組織切片において、AACOCF3投与群ではplacebo投与群に比し、メサンギウム領域の減少を認めた。③Iba-1抗体を用いた免疫組織学的検討の結果、糸球体内及び腎間質へのマクロファージ浸潤度の低下を認めた。④同組織におけるTNF-α、IL-1β、MCP-1のmRNA発現はAACOCF3投与群で有意に減少していた。⑤AACOCF3投与群では、尿中アルブミン排泄量の有意な低下を認めた。以上の結果より、STZ誘導糖尿病モデルマウスにおける腎症発症進展に対するcPLA2阻害薬の有効性が確認された。
3: やや遅れている
cPLA2阻害薬使用による糖尿病性腎症発症・進展予防効果を確認したが、cPLA2ホモ欠損マウスの準備に予想外に時間がかかったため、cPLA2欠損マウスを用いた実験にまでは行きつかなかった。平成30年度には実験開始予定であり、現在cPLA2ホモ・ヘテロ欠損マウスを準備中であり、
次年度は、cPLA2 KOマウスを用いて、STZ誘発糖尿病モデル下での腎症発症進展恵の影響を観察する予定である。方法は、平成29年度で行ったAACOCF3を用いた検討と同様の実験及びその結果の解析を予定している。また、同時にヒト腎糸球体内皮細胞、ヒト腎メサンギウム細胞、マウス若しくはラット腎糸球体上皮細胞およびマウス腹腔から回収したマクロファージの培養を開始し、平成31年度のin vitro実験に使用可能な細胞の準備を行う予定である。
直接経費支払額1,100,000円に対し,1,098,443円を使用.残金1,557円は次年度の助成金と合わせて物品購入費に使用する予定.
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Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology
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