研究課題
若齢ラットと加齢ラットを用いて黒質ニューロンの投射元として視床下部領域ニューロンの電気活動を脳スライスパッチクランプ法を用いて検討を行った。その結果、若齢ラットにおいては活動電位の発生が少ないのに対し、40週令を境にニューロンの電気活動が盛んになっており、膜電位の上昇も確認できた。加齢に伴いニューロンの電気生理学的特徴の変化が確認でき、投射先である黒質においてもその影響があることが強く示唆された。また組織学的にも視床下部ニューロンの大きさなども加齢に伴って変化していることも確認された。同様に高脂肪食負荷によって若齢ラットにおいて肥満/糖代謝異常の状態を作成し、同様に電気生理学的検討を行った結果、加齢ラットと同様の活動電位の発生と膜電位の上昇が確認された。生活習慣病(肥満・糖代謝異常)モデルでは加齢と同じ現象が視床下部において発生していることが強く示唆された。また変異型KATPチャネルをAAVベクターを用いて脳の黒質に注入し、変異型KATPチャネルを発現させることに成功した。変異型KATPチャネルを発現させたラットの黒質においてαーシヌクレインなどのパーキンソン氏病における運動状態の変化を引き起こす因子の発現に変化が起きていないかを病理組織学的に検討したが、とくにコントロール群と差はなく、今回のモデルではKATPチャネルがパーキンソン氏病などとは異なる機序によって運動機能をコントロールしている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
黒質の投射元において加齢ならびに高脂肪食負荷がニューロンの特性を変化させていることを確認できた。さらに投射先において変異型KATPチャネルを発現させることに成功したため。
加齢や高脂肪食負荷に伴う生活習慣病(肥満・糖代謝異常)モデルのラットにおいて確認できた視床下部の電気生理学的特性の変化に対するKATPチャネルの寄与を確認するためにKATPチャネルの阻害剤を用いて検討を行う。さらに投射先の黒質におけるニューロンの電気生理学的特徴の変化を加齢・高脂肪食負荷ラットにおいて行う。具体的には活動電位の発生頻度(frequency)と膜電位の変化さらにはEPSC、IPSC測定による黒質ニューロンへの入力信号の変化を測定する。また黒質に変異型KATPチャネルを発現したラットにおいて運動機能・筋力などの機能解析さらには筋肉の組織学的変化を検討する。
想定していた以上に研究が円滑に行われた結果です。翌年度使用計画に関しましては翌年度の研究は技術的にも困難な部分があるため、必ずしも円滑に実験が進まなかった場合に使用します。
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