研究課題/領域番号 |
17K09841
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
山川 正 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 准教授 (30264641)
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研究分担者 |
寺内 康夫 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (40359609)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 睡眠の質 / 血糖コントロール |
研究実績の概要 |
2型糖尿病の発症、進展には睡眠障害が関連することが示唆されており、当院の小規模調査でも、短時間睡眠及び睡眠の質の低下と高血糖との関連が明らかとなった。【方法】2型糖尿病患者4000例を対象とし、患者の睡眠状況、心理的負担、QOL、栄養摂取状況を評価するため(1)ピッツバーグ睡眠質問票日本語版(PSQI)。(2)糖尿病QOL質問票;DTR-QOL: 。(3)簡易型自記式食事歴法質問票;BDHQ。(4) 感情負担度(糖尿病問題質問票 Problem Areas in Diabetes Survey:PAID)の各質問票による調査を行った。【結果】現在までのところ、2型糖尿病患者2491人(年齢63.0±11.8歳、男性1536人、女性955人、HbA1c 7.4±1.5%)に対してPSQIを用い、睡眠時間、睡眠の質などを調査し、HbA1cとの関連を検討することができた。平均睡眠時間6.4±1.3時間、PSQI総得点5.8±3.3点であった。PSQIが6点以上の睡眠障害の頻度は45%であり、高頻度に睡眠障害を合併していた。HbA1c≦6.5%、6.6-7.0%、7.1-7.7%、7.8%≧の4群に分けると、PSQI総得点は順に5.68±3.15、5.49±3.10、5.68±3.19、6.45±3.54点、睡眠時間は6.50±1.20、6.50±1.17、6.48±1.26、6.18±1.34時間と、HbA1c7.8%以上の高値群でPSQI総得点は有意に高く、睡眠時間は短かった(いずれもp<0.01、VS 7.1-7.7%)。【考察】2型糖尿病患者は睡眠障害を高率に合併しており、睡眠時間は短く、睡眠の質は不良であることが明らかとなった。また睡眠の質と血糖コントロールの悪化と関連があることが示唆された。血糖コントロールが改善しない場合には睡眠の質についても評価し、改善することが重要であると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、対象施設・患者を抽出し、睡眠時間や睡眠の質、食品摂取状況、QOLを4種類の調査票を用いて調べる。神奈川県内の24施設の参加が決定し、倫理委員会での承認をへて、患者のリクルートを開始した。 対象及び方法:研究参加施設に通院または入院中で20歳以上85歳未満の2型糖尿病患者4000例を対象とし、患者の睡眠状況、心理的負担、QOL、栄養摂取状況を評価するため選択基準に適合する患者に文書による同意を取得後、調査票の配布、回収を行う。使用する調査票及び測定項目は下記の通りである 使用する調査票 (1)ピッツバーグ睡眠質問票日本語版;睡眠の質を評価する質問票である。(2)糖尿病QOL質問票;DTR-QOL: 糖尿病患者のQOLを評価することが可能である。(3)簡易型自記式食事歴法質問票;BDHQ: Brief-type self-administered Diet History Questionnaire 栄養素や食品の摂取状態を定量的に調べることができる。(4) 感情負担度(糖尿病問題質問票 Problem Areas in Diabetes Survey:PAID)現在、4000例余りの症例を集め、データの収集、入力作業、整理を行っている。睡眠障害と血糖や食習慣、食事摂取内容、QOLとの関連について統計解析を行う方針とし、本年度は睡眠障害と血糖コントロールの関連についてのデータ入力、整理、統計解析を行った。現在までのところ、2型糖尿病患者2491人(年齢63.0±11.8歳、男性1536人、女性955人、HbA1c 7.4±1.5%)に対してピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用い、睡眠時間、睡眠の質などを調査し、HbA1cとの関連を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、①睡眠障害と糖代謝との関連、②糖尿病患者の食事内容(特に3大栄養素)、③睡眠障害の食事摂取内容に与える影響、④睡眠とQOLとの関連、⑤オレキシン受容体拮抗薬による睡眠治療が血糖、血糖変動性の改善に繋がるかについて検討することである。現在①のついての統計解析を行い、上記のデータを得ている。 ②2型糖尿病患者の食事摂取状況:2型糖尿病の三大栄養素についての適正比率を定めるためのエビデンスは乏しく、また、日本人2型糖尿病を対象とした栄養摂取状況の大規模な報告は非常に少ない。2型糖尿病患者の栄養摂取状況の大規模調査は貴重であり、更に睡眠と食事との関連を明らかにするうえで基礎的なデータになるため非常に重要である。③睡眠障害と食事内容との関連:睡眠不足や睡眠の質の低下により、食欲を調整するホルモンであるレプチンやグレリンの分泌異常が起こり、食欲を活性化し肥満を助長する。また、短時間睡眠は脂質の過剰摂取と関連する。このように睡眠と栄養摂取は密接な関連が示唆されている。今後、食事内容についての調査BDHQについてのデータを入力、整理し、統計解析を進めていく予定である。このことにより②~④についての解析の促進を図る。また、⑤については現在、実験計画の詳細を詰めているところではあるが、臨床研究法が平成30年4月より申請書類の作成、研究実施体制、監査、モニタリング体制の構築に時間を要している。迅速に進められるよう関係各所と協力しながら進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的は、①睡眠障害と糖代謝との関連、②糖尿病患者の食事内容(特に3大栄養素)、③睡眠障害の食事摂取内容に与える影響、④睡眠障害のQOLに与える影響、⑤オレキシン受容体拮抗薬による睡眠治療が血糖、血糖変動性の改善に繋がるかについて検討することである。現在①睡眠の質の指標であるPSQIについてのデータ入力は終了し、統計解析を行い、上記のデータを得ることができた。現在発表の準備を行っている。しかし、②~④に関連する食事内容調査である簡易型自記式食事歴法質問票BDHQ及び糖尿病QOL質問票;DTR-QOL 、並びに感情負担度(PAID)の入力は遅れており、本年度はこれらの入力により人件費として謝金を利用する。また、BDHQについては利用料がかかるためそこに充当する。次に、⑤オレキシン受容体拮抗薬による睡眠治療が血糖、血糖変動性の改善に繋がるかについては、現在詳細な計画を作成中である。薬剤による介入であり、RCTのため、特定臨床研究に該当する。現在、臨床研究審査委員会への申請書類を準備してる途中であるが、4月から施行された臨床研究法により、規制が厳しく、多くの書類が必要であること、監査体制の構築などに非常に時間を要しており、申請が遅れている。これらによる研究の開始の遅れにより研究費の使用が次年度にまたがり、本年度に、申請準備、申請費などに使用する予定である。
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