研究課題/領域番号 |
17K09842
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
古田 浩人 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90238684)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 遺伝因子 / ABCC8遺伝子 / HNF1A遺伝子 |
研究実績の概要 |
糖尿病濃厚家系を対象に全エクソームシークエンス解析法などを用いその遺伝因子の解明に取り組んでおり以下の成果を得ている。 膵β細胞のATP感受性Kチャネルを構成するABCC8遺伝子異常は、機能亢進型遺伝子変異の場合はインスリン分泌障害による糖尿病を機能低下型変異の場合はインスリン分泌過剰による新生児低血糖症を生じることが知られているが、機能低下型変異(p.K1384Q変異)が糖尿病発症の原因と考えられる家系を同定した。同家系では、発端者およびその父親は思春期以降に食前に軽い低血糖症状を自覚していたがその後消失、各々、39歳、55歳時に糖尿病と診断、一方、発端者の息子および娘は新生児低血糖症を発症するもジアゾキサイド治療で改善後、治癒、その後、耐糖能障害を認めていた。さらに、同様に機能低下型変異が糖尿病発症の原因と考えられる若年発症(15歳と18歳時診断)の兄弟例も同定している。二人ともp.R168C変異 および p.R1420C変異の複合ヘテロ変異を有しており、各々を耐糖能正常の両親から受け継いでいた。兄はこれまで低血糖を自覚したことはなかったが、弟は出生後に一過性に低血糖が認められていた。これらの結果は、ABCC8遺伝子異常は機能亢進型だけでなく機能低下型変異もまた糖尿病の原因となること、低血糖症状の既往のある糖尿病においては同遺伝子異常の関与の可能性を考えるべきであることを示唆している。 さらに、HNF1A遺伝子変異による糖尿病では血清CRP値が低値であることが特徴の一つであるが、GCK遺伝子変異による糖尿病などにおいても低値であることが多い。今回、それらの遺伝子変異を有する糖尿病患者を経時的に観察することでHNF1A遺伝子変異による糖尿病では白血球が上昇するような炎症状態においても血清CRP値は上昇せず、白血球数との対比が鑑別診断にとって有用であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ABCC8遺伝子異常は機能亢進型だけでなく機能低下型変異もまた糖尿病の原因となること、低血糖症状の既往のある糖尿病においては同遺伝子異常の関与の可能性を考えるべきであること、血清CRP値と白血球数との対比がHNF1A遺伝子異常による糖尿病の鑑別診断にとって有用であることなどを明らかにすることができ、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、原因遺伝子が明らかとなっていない糖尿病濃厚家系を対象に全エクソームシークエンス解析法などを用いその遺伝因子の解明に取り組んでいるが、平成29年度に一定の成果が得られたことから平成30年度においても同様の方法で研究を続行する。さらに、今年度より糖尿病学会の「単一遺伝子異常による糖尿病の成因、診断、治療に関する調査研究」に関する委員会メンバーとして活動を開始することから、他施設とのデータと突合することで研究の推進を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画の時点よりも価格が低下し概算よりも少ない費用で研究が可能であった。平成30年度においては、当初の計画よりも対象とする家系数を増やすことが可能になったことから、さらに、精力的に糖尿病の遺伝因子の解明に取り組みたいと考えている。
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