研究課題
全エクソームシークエンス解析法を用い血糖調節に関係する遺伝因子の解明に取り組み以下の発表を行った。膵β細胞では、血糖値に比例して細胞内グルコース量さらにその代謝により産生されるATP量が増加することで、細胞膜に存在するATP感受性Kチャネル(KATP チャネル)が閉鎖しインスリン分泌反応が生じる。ABCC8遺伝子はKATPチャネルを構成する蛋白の一つであるスルホニル尿素受容体(SUR)1をコードする遺伝子で、機能亢進型変異の場合はKATPチャネルの閉鎖障害によりインスリン分泌障害が生じ糖尿病が発症するが経口血糖降下薬の一つであるSU薬が著効する。今回、ABCC8遺伝子のp.Pro1198Leu変異による新生児糖尿病症例を6年間追跡調査しSU薬が変わらず有効であることを報告した。一方、機能低下型変異の場合はインスリン分泌過剰により低血糖症を生じることが知られているが、機能低下型変異が糖尿病の原因と考えられる2家系の報告を行った。第一家系では、変異はヘテロ接合型状態で遺伝しており、発端者とその父親は青壮年期に低血糖症状を自覚していた時期があり、その後、39歳、55歳時に糖尿病と診断、さらに、発端者の息子および娘は出生後新生児低血糖症を発症するも薬物治療で改善、治癒、その後、逆に耐糖能障害が出現していた。第二家系では耐糖能正常の両親から各々異なった変異を受け継ぎ複合ヘテロ接合型状態で変異を有する若年発症糖尿病の兄弟例であった。これらの結果は、ABCC8遺伝子異常は機能低下型変異もまた日常臨床において糖尿病の原因となることを示唆している。さらに、機能低下型変異による糖尿病症例ではインクレチン関連薬が有効であることを示唆する知見も認められた。上記に加え、オクトレオチド持続皮下注射にて6年間良好な血糖コントロールが得られている新生児低血糖症例の原因がABCC8遺伝子ヘテロ接合型p.Leu511Met変異であることを報告した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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