研究課題
インスリンを分泌する膵β細胞の機能障害は、糖尿病の原因となる。本研究では、成熟膵β細胞で通常抑制されている遺伝子の発現増強が、糖尿病における膵β細胞機能障害のメカニズムに関与する可能性について検討している。前年度までに我々は、(1)成熟分化段階の膵島について、(2)糖尿病モデルマウスの膵島について、さらに(3)成熟β細胞のマーカー遺伝子Mafaのレポーターマウス膵島より分離した、Mafa陽性7-AAD陰性の成熟β細胞群とMafa陰性7-AAD陰性の膵島細胞群について、RNA-seqとマイクロアレイにより網羅的遺伝子発現解析を施行した。今年度はこれらの結果についてさらに解析を進め、成熟膵β細胞で発現が抑制され、糖尿病モデルマウスの膵島で発現が増強する遺伝子群の候補を同定した。さらに、上記レポーターマウスから分離した成熟β細胞群とその他の膵島細胞群における、上記の遺伝子群の発現を検証した。また、糖尿病モデルマウス膵島や、糖尿病モデルマウスの膵β細胞株における発現についても、対照群と比較解析し、成熟β細胞で特異的に発現が抑制されていると確認された遺伝子のリストより、特定のシグナル伝達系を同定した。また、それら分子の発現制御領域のDNAメチル化の解析から、その分子の一部についての遺伝子発現抑制メカニズムを明らかにした。現在、過剰発現系を用いて、同定された遺伝子の機能を解析するとともに、それら遺伝子の発現制御領域のメチル化を解析している。
3: やや遅れている
遺伝子改変動物の凍結精子からの個体産生によるマウスのSPF化の遅れと、新型コロナウイルス感染症の影響による研究活動の制限から、当初の計画よりやや遅れている。実験動物は2019年11月の搬入後順調に繁殖され、実験に利用されている。引き続き感染症に留意しながら、研究活動は施行できている。
同定した遺伝子群について、引き続き、過剰発現系を用いた遺伝子の機能解析を進め、これら分子が膵β細胞障害のメカニズムにどのように関与し、また、膵β細胞障害の病態を反映するバイオマーカーとなり得るかについて明らかにするとともに、それらの発現制御領域におけるDNAメチル化の状態を解析して、成熟膵β細胞に特徴的な遺伝子発現制御メカニズムとその意義を解明する。
遺伝子改変動物の凍結精子からの個体産生によるマウスのSPF化の遅れと、新型コロナウイルス感染症の影響による研究活動の制限による、研究の遅れのため。
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