研究課題/領域番号 |
17K09844
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
海老原 健 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70362514)
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研究分担者 |
海老原 千尋 自治医科大学, 医学部, 助教 (90790915)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肥満 / レプチン抵抗性 / 小胞体ストレス / ATP |
研究実績の概要 |
肥満の原因としてレプチン抵抗性が注目されている。視床下部における小胞体ストレスがレプチン抵抗性を惹起することが報告されている。我々はこれまでにAAA ATPaseファミリーに属するvalosin-containing protein (VCP)を阻害することでレプチン抵抗性が改善することを見出した。小胞体ストレス時にはATP需要が高まるため、ATPaseの阻害は小胞体ストレスの緩和に作用するものと考えられる。そこで高脂肪食によるレプチン抵抗性誘導時およびVCP阻害薬であるKUS化合物投与時のマウス視床下部ATP濃度の変化を検討した。その結果、慢性的な高脂肪食負荷で視床下部ATP濃度は低下し、KUS化合物投与で視床下部ATP濃度は回復するこ とが明らかとなった。この検討において、慢性的な高脂肪食負荷で視床下部のレプチンシグナル(STAT3のリン酸化)は低下し、KUS化合物投与で視床下部リン酸化STAT3量は回復することを確認した。さらに、慢性的な高脂肪食負荷で視床下部の小胞体ストレスマーカーの発現は増強し、KUS化合物投与で視床下部小胞体ストレスマーカーの発現は減弱することも確認した。以上より、KUS化合物は視床下部ATP濃度を上昇させることにより小胞体ストレスを緩和し、レプチン感受性が回復するものと考えられた。そこで次に、視床下部ATPとレプチン感受性の関係を検討する目的で、VCP阻害以外の方法で視床下部ATP濃度を上昇させたときのレプチン感受性の変化を検討することとした。中鎖脂肪酸あるいは1,3-Butandiol により血中ケトン体濃度を上昇させ視床下部ATP濃度を上昇させると高脂肪食によるレプチン抵抗性は改善することを確認した。現在、この時の視床下部における小胞体ストレスマーカーの発現を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は研究実施計画にある通り、野生型マウスに高脂肪食負荷を行い、小胞体ストレスおよびレプチン抵抗性が誘導された状態で、視床下部におけるATP濃度が低下することを確認することができた。さらに、細胞内で最も豊富に存在する可溶型ATPaseであるVCPの阻害により、視床下部ATP濃度が上昇し、小胞体ストレスの緩和およびレプチン感受性の回復がもたらされることを明らかにした。以上より、KUS化合物は視床下部ATP濃度を上昇させることにより小胞体ストレスを緩和し、その結果レプチン感受性が回復するとの仮説が成り立つ。平成30年度はこの仮説を検証する目的でVCP阻害以外の方法で視床下部ATP濃度を上昇させたときのレプチン感受性の変化を検討した。中鎖脂肪酸あるいは1,3-Butandiol により血中ケトン体濃度を上昇させ視床下部ATP濃度を上昇させると高脂肪食によるレプチン抵抗性は改善することを確認した。現在、この時の視床下部における小胞体ストレスマーカーの発現を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
慢性的な高脂肪食負荷により視床下部ATP濃度は低下し、細胞内で最も豊富に存在する可溶型ATPaseであるVCPの阻害により、視床下部ATP濃度が上昇し、小胞体ストレスの緩和およびレプチン感受性の回復がもたらされることを明らかにした。これらの結果から、KUS化合物は視床下部ATP濃度を上昇させることにより小胞体ストレスを緩和し、その結果レプチン感受性が回復するとの仮説が成り立つ。この仮説を検証する目的でKUS化合物を用いたVCP阻害以外の方法で視床下部ATP濃度を上昇させたときの視床下部小胞体ストレスおよびレプチン感受性の変化を検討することとした。中鎖脂肪酸あるいは1,3-Butandiol により血中ケトン体濃度を上昇させ視床下部ATP濃度を上昇させると高脂肪食によるレプチン抵抗性は改善することを確認した。今後は、この時の視床下部における小胞体ストレスマーカーの発現を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入の際に業者割引により上記の残金が発生した。 残金については次年度の試薬等の物品購入費に充てる予定である。
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