研究課題
VAMP7は膜融合を仲介する、いわゆるSNAREタンパク質である。膵β細胞においてVAMP7はオートファゴソーム形成に関与することにより、機能不全ミトコンドリアの除去に関わることが我々の研究により明らかになっている。VAMP7によるオートファゴソーム形成の制御機構について検討した昨年度までの研究により、1)VAMP7はオートファジー関連タンパク質であるAtg9aと同じ小胞上に局在し、オートファゴソーム形成に関与する、2)VAMP7はHrb、SNAP-47、Syntaxin16と相互作用することによりオートファゴソーム形成を制御することを明らかにした。そこで本年度はこれらの結果を論文にまとめて発表するために必要な研究を行った。Atg9aをノックダウンすると、VAMP7、Hrb、SNAP-47、Syntaxin16をノックダウンした時と同様、細胞内に機能不全ミトコンドリアが蓄積し、グルコース刺激依存的なインスリン分泌が減弱することを明らかにした。つぎに、オートファジーによって分解されるミトコンドリアを可視化する蛍光タンパク質プローブを構築し、可視化解析を行った。その結果、Atg9a、Hrb、SNAP-47、Syntaxin16をノックダウンすると、オートファジーによるミトコンドリアの分解が抑制されることを明らかにした。さらに、SNAP-47とSyntaxin16の一部がVAMP7およびAtg9aと同じ小胞膜上に局在することを免疫染色法により明らかにした。昨年度までに得られていた結果とあわせ、これらの結果をEndocrinology誌に論文として発表した。また、オートファジーを介したミトコンドリアの分解を可視化するプローブを膵β細胞に発現するマウスを開発し、機能不全ミトコンドリアの分解活性を可視化する実験系の構築に成功した。
2: おおむね順調に進展している
VAMP7がAtg9aと協同してオートファゴソーム形成にはたらくこと、またVAMP7がHrb、SNAP-47、Syntaxin16と相互作用することによりオートファゴソーム形成にはたらくことについて論文にまとめることができた。また、機能不全ミトコンドリアの分解活性をマウスにおいて可視化する実験系の構築に成功した。
高脂肪食飼育したり、糖尿病モデルマウスと交配することにより、機能不全ミトコンドリアの分解活性を可視化できるマウスにおいて糖尿病を誘導し、機能不全ミトコンドリアの分解・蓄積のバランスと糖尿病発症の関連について解析を行う予定である。
VAMP7がAtg9aと共にはたらくことでオートファゴソーム形成を制御することを論文にまとめる過程で、見込んでいた実験の一部を行わなくて良いと査読者から指摘されたため。今年度の実験に必要な消耗品の購入に使用する予定。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Cell Reports
巻: 29 ページ: 1213-1226.e7
10.1016/j.celrep.2018.12.106
Endocrinology
巻: 159 ページ: 3674-3688
10.1210/en.2018-00447