研究課題
タンパク質分解経路の1つであるオートファジーは、免疫応答、発癌抑制といった病態において重要な役割を果たしている。これまで我々は、膵β細胞の恒常性維持にオートファジー機構が重要な役割を担うことを明らかにしてきた。一方、もう1つの膵内分泌細胞でα細胞からのグルカゴン分泌異常が糖尿病の病態に関与することが報告されているものの、α細胞におけるオートファジーがこの病態にどのような役割を果たしているのか未解明である。そこで、autophagy statusを可視化するためのレポーターマウス“GFP-LC3マウス“の膵島を顕微鏡下で観察することによりα細胞のautophagy statusを観察した結果、絶食によりα細胞内にGFP punctaが集積することを見出した。次に、オートファジー機能維持に不可欠な遺伝子Atg7をα細胞特異的に欠失させたαAtg7KOマウスを作製した。オートファジーの選択的基 質の1つであるp62に対する免疫組織染色では、α細胞特異的にp62陽性の凝集塊を認め、我々の目的通りα細胞特異的にオートファジー不全が誘導されていることが確認された。αAtg7KOマウスの膵島の一部ではα細胞の多層化を伴う過形成を認め、膵島の形態異常を認めた。Ki67陽性細胞数はαAtg7KOマウスにおいて有意に低下しており、またα細胞死の抑制を認めないことから、膵島の過形成はα細胞の自己複製の亢進や細胞死の抑制によるものではなく、α細胞新生の亢進が関与している可能性が示唆された。 一方、随時血糖、グルカゴン分泌、および体重の推移はαAtg7KOマウスと対象マウスとの間に有意な変化を認めなかった。以上の結果はα細胞におけるオートファジーの恒常性維持がα細胞容量の恒常性および膵島の形態形成に何らかの役割を果たしていることを示唆している。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of the Endocrine Society
巻: 3 ページ: 1979-1992
10.1210/js.2019-00075